ベック (歌手)

ベック・ハンセン

ベック・ハンセン（Beck Hansen）は、1970年7月8日生まれのアメリカ合衆国のミュージシャン、ソロ・アーティストです。1990年代以降、アメリカ音楽界を代表する存在として、多様な音楽性を融合させた革新的な作品で批評家、リスナー双方から高い評価を得ています。

カリフォルニア州ロサンゼルス出身。作曲家の父デヴィッド・キャンベル、芸術家・女優の母ビビ・ハンセンを持ち、母方の祖父はフルクサス芸術家のアル・ハンセンです。両親の離婚後、母に育てられ、ヒップホップからラテン音楽まで多様な音楽やアートシーンに影響を受けて育ちました。少年期にはカシオの電卓で作曲するなど、早くから音楽に傾倒。高校中退後、ヨーロッパを旅して音楽性を磨き、祖父を通じてフルクサスにも触れています。

1993年、インディーより『Golden Feelings』でデビュー。同年発表のシングル『ルーザー』がラジオで評判を呼び、複数のレーベル争奪戦を経てDGCレコードと契約しメジャーデビューを果たしました。

1994年のメジャー第一作『メロウ・ゴールド』に収められた「ルーザー」は大ヒットし、アルバムも成功を収めました。1996年、ダスト・ブラザーズとの『オディレイ』では、サンプリングを駆使し、フォーク、ロック、ヒップホップなど多ジャンルを融合。この作品は「1990年代の歴史的傑作」として高い評価を受けました。

続く1998年の『ミューテーションズ』では、ナイジェル・ゴッドリッチと共に制作。前作とは一転、フォーキーなサウンドで周囲の期待を意図的に裏切ります。1999年の『ミッドナイト・ヴァルチャーズ』は、ファンキーでダンス要素を取り入れ「セクシー＆パーティー･アルバム」と評されました。

2002年、ナイジェル・ゴッドリッチとの『シー・チェンジ』はローリング・ストーン誌年間アルバム1位など高評価を獲得。2005年、ダスト・ブラザーズとの『グエロ』は「E-PRO」などのヒットで全米2位を記録。翌年にはナイジェル・ゴッドリッチプロデュースの『ザ・インフォメーション』を発表しました。2008年、デンジャー・マウスと共同プロデュースした『モダン・ギルト』では60年代風サウンドにアプローチ。

2014年には6年ぶりとなる『モーニング・フェイズ』をリリース。後に、長年の脊椎損傷からの回復を経ての作品であることを明かしました。2019年にはファレル・ウィリアムスらと共同プロデュースした『ハイパースペース』を発表しています。

自身の作品制作に加え、映画への楽曲提供や、シャルロット・ゲンズブールのアルバム制作など、プロデューサーとしても活動しています。

グラミー賞においても多くの栄誉に輝いています。第57回（2015年）では『モーニング・フェイズ』が最優秀アルバム賞と最優秀ロック・アルバム賞を受賞。第61回（2019年）では、アルバム『カラーズ』が最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞と最優秀アルバム技術賞を受賞しました。

私生活では、2004年に女優マリッサ・リビシと結婚し2児をもうけましたが、2019年に離婚を申請。サイエントロジーについては、父の影響で過去に信者でしたが、現在は異なる立場にあることを述べています。元妻とその兄弟はサイエントロジストです。

キャリアを通じて日本での公演も数多く、1994年の初来日以降、ソロツアーや大型フェスティバルへの出演を頻繁に行っています。

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