ベッポサックス

ベッポサックス（BeppoSAX）

ベッポサックスは、イタリアとオランダが共同で開発したX線天文学衛星です。宇宙で最も明るい現象の一つであるガンマ線バーストの起源を解明する上で、重要な役割を果たしました。衛星の設計と運用は、両国の複数の企業が担当しましたが、主要な科学観測機器はイタリアのCNR科学研究所で開発されました。広域カメラはオランダのSRON宇宙研究所で製造されました。

名称の由来

ベッポサックスの名前は、イタリアの物理学者ジュゼッペ・“ベッポ”・オキャリーニにちなんで名付けられました。SAXは、「Satellite per Astronomia a raggi X」（X線天文学衛星）または「Satellite for X-ray astronomy」を意味します。

X線観測の重要性

地球の大気はX線の多くを遮断するため、地上からのX線観測は困難です。そのため、宇宙空間にX線観測衛星を打ち上げることが必要とされます。

主な成果

ベッポサックスの主な成果の一つは、多くのガンマ線バーストが銀河系外の天体から発生していることを突き止めたことです。これにより、ガンマ線バーストの研究が大きく進展しました。

運用期間

1996年に打ち上げられたベッポサックスは、当初2年間の運用予定でしたが、その後延長され、2002年4月30日まで観測を続けました。しかし、軌道高度の低下が急速に進み、多くのサブシステムが故障したため、運用を終了しました。2003年4月29日、衛星は大気圏に再突入し、太平洋に落下しました。

衛星の特徴

ベッポサックスは、以下の特徴を持っていました。

大きさ: 高さ3.6m、幅2.7m
太陽電池電力: 3kW
データ発生量: 1軌道（90分）あたり1GB

搭載機器

ベッポサックスには、以下の5つの科学観測機器が搭載されていました。

1. 低エネルギー集線分光計 (LECS): 0.1～10keVの低エネルギーX線を観測
2. 中エネルギー集線分光計 (MECS): 1.3～10keVの中エネルギーX線を観測
3. 高圧ガスシンチレーション比例計数管 (HPGSPC): 3～120keVの高エネルギーX線を観測
4. ホスウィッチ検出器 (PDS): 100～600keVの硬X線・ガンマ線を観測
5. 広域カメラ (WFC): 2～30keVのX線を広範囲に観測

これらの観測装置のうち、最初の4つは同じ方向を向いており、0.1から300keVの広いエネルギー帯での観測を可能にしました。広域カメラは、空の40×40°の範囲をカバーする2つの符号化絞りカメラで構成され、2〜30keVのエネルギー範囲で動作します。また、100〜600keVのほぼ全天を観測するホスウィッチ検出器によって補完されました。

観測方法

理論的には、ガンマ線バーストは最初にホスウィッチ検出器で観測され、その位置が広域カメラによって詳細に決定されることになっていました。しかし実際には、ホスウィッチ検出器の多数のスパイクノイズのために、ガンマ線バーストは広域カメラによって発見されました。観測の精度はバーストからの信号対雑音比に依存し、座標は速やかに国際天文学連合（IAU）およびガンマ線バースト連携ネットワークに送信され、地上からの追観測へと繋がりました。

各観測機器の詳細

中エネルギー集線分光計（MECS）: 1.3〜10keVの範囲の3つの独立したガスシンチレーション比例計数管で構成されています。
低エネルギー集線分光計（LECS）: 中エネルギー集線分光計と構造は似ていますが、0.1keVまで光子のエネルギーを下げることができるより薄い窓を備えています。しかし、校正の問題により4keV以上のデータは使用されていません。
高圧ガスシンチレーション比例計数管（HPGSPC）: 3気圧という高圧のガスを使用しており、120keVまでの光子を検出できます。
ホスウィッチ検出器（PDS）: ヨウ化ナトリウムとヨウ化セシウムの結晶シンチレーターであり、300keVまでの光子を捕捉します。ただし、ガス検出器と比較して分解能は劣ります。

外部リンク

BeppoSAX Science Data Center
* HEASARC BeppoSAX Guest Observer Facility

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