ベニーズ・ビデオ

『ベニーズ・ビデオ』（1992年）は、ミヒャエル・ハネケ監督による劇場映画第2作であり、国際批評家連盟賞を受賞した問題作です。

作品の特徴

本作は、劇中に「映像の中の映像」が繰り返し登場する、メタ的な構造が特徴です。ビデオカメラを通して世界を認識する主人公ベニーの視点と、彼が作り出す映像が、観る者に現実と虚構の境界線を曖昧にさせます。

あらすじ

主人公の少年ベニーは、自室にこもり、自ら撮影した豚の屠殺映像を繰り返し見ています。彼は日常的にビデオ撮影を行い、ビデオショップに通うことを好みます。しかし、いつの頃からか、ベニーは映画の中の暴力的な描写にすら刺激を感じなくなっていました。

ある日、ベニーは街で知り合った少女を自宅に招き、屠殺ビデオを見せます。少女が帰ろうとした際、ベニーは父親の猟銃を彼女に向け、誤って発砲してしまいます。少女は腹部を撃たれ、部屋の中を逃げ惑いますが、ベニーは困惑しながらも、少女が絶命するまで銃弾を浴びせ続けます。この殺人の一部始終は、ベニーの部屋に設置されたビデオカメラによって記録されていました。

殺人を犯した後も、ベニーの心境に変化は見られません。彼は淡々と後始末をし、友人の家へ遊びに行き、帰りに理髪店で髪を丸刈りにします。父親の説教もどこ吹く風で、ベニーは両親に少女殺害のビデオを見せるのです。衝撃を受けた両親は、自分たちの将来を守るため、ある決断を下します。

『ベニーズ・ビデオ』は、現代社会における映像メディアの氾濫と、それが人々の心理に与える影響を鋭く描き出した作品です。ベニーの異常な行動を通して、現代社会の病理を浮き彫りにするとともに、観る者に深い問いを投げかけます。

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