ベネディクトゥス5世 (ローマ教皇)

ベネディクトゥス5世は、10世紀にローマ教皇を務めた人物です。彼の生涯は、当時の政治情勢と教会の権力争いに深く関わっています。出自はローマで、生年は不明ですが、966年7月4日に没しています。

963年、教皇ヨハネス12世が神聖ローマ皇帝オットー1世によって廃位され、代わりにレオ8世が教皇に擁立されました。しかし、レオ8世はローマ市民からの支持を得られず、翌年にオットー1世がローマを離れると、レオ8世はローマから逃亡しました。その後、ヨハネス12世が復位しますが、間もなく急死します。このような混乱の中、助祭であり文法学者であったベネディクトゥスが、ローマ市民によって964年5月に教皇に選出されました。

しかし、オットー1世はこの選出を認めませんでした。皇帝はローマに戻ると、軍事的な圧力をかけ、ベネディクトゥス5世を教皇位から降ろしました。同時代の記録によれば、ベネディクトゥス自身もこの決定に同意したとされています。

ベネディクトゥス5世の降格を決めた教会会議では、レオ8世がベネディクトゥス5世から教皇の象徴であるパリウムを剥ぎ取り、司牧杖を折ったという記録が残っています。この記録は、教皇の司牧杖に関する最古の記述として知られています。

降格後、ベネディクトゥスはハンブルクに移送され、ハンブルク・ブレーメン大司教アダルダークの監視下に置かれました。その後も助祭として過ごし、966年に亡くなりました。遺体は当初ハンブルクの聖堂に埋葬されましたが、後にローマに移されました。ベネディクトゥス5世の教皇在位はわずか1ヶ月強と非常に短く、その生涯は当時の政治的混乱を象徴するものでした。教皇としての実質的な活動期間は短かったものの、彼の名前は歴史に刻まれています。

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