ベラシ・F1 70

ベラシ・F1 70：F1世界選手権に挑んだ短命マシン

ベラシ・F1 70は、1970年から1971年にかけてF1世界選手権に参戦した、忘れ去られた存在と言えるフォーミュラ1マシンです。このマシンは、スイス人ドライバー、シルビオ・モーザーが率いるシルビオ・モーザー・レーシングチームによって開発・運用されました。

モーザーは、それ以前はシャルル・ホーゲルチームに所属していましたが、1969年にチームを買収。新たなチームを設立し、ブラバム・BT24を購入して参戦しました。このシーズンでは7戦に出場し、アメリカグランプリで6位入賞を果たすなど、1ポイントを獲得する活躍を見せました。

しかし、1970年シーズンのレギュレーション変更により、旧型のブラバム・シャシーの継続使用は不可能となりました。モーザーは、自らのチームで使用するオリジナルのF1マシンを開発する必要に迫られました。こうして誕生したのが、ベラシ・F1 70です。

ベラシ・F1 70は、アルミニウム製モノコックシャシーに信頼性の高いコスワースV8エンジンを搭載したマシンでした。しかし、開発が遅れたため、シーズン序盤のレースには間に合いませんでした。初登場となったのは第5戦オランダグランプリでしたが、予選で最下位となる24位に終わり、決勝レースへの進出は叶いませんでした。続くフランスグランプリでも予選21位と振るわず、決勝レースには出場できませんでした。このフランスGPでは、予選最下位だったグラハム・ヒルとのタイム差はわずか0.26秒という接戦だったと伝えられています。

チームは資金難のため、イギリスグランプリを欠場せざるを得ませんでした。ドイツグランプリには出場したものの、ここでも予選落ち。続くオーストリアグランプリでようやく予選突破を果たしたものの、決勝レースでは13周目にエンジンのオーバーヒートによりリタイアという結果に終わりました。イタリアグランプリでも予選落ちし、その後はシーズン後半のレースへの出場を断念することになりました。

1971年シーズンは、イタリアグランプリのみに参戦しました。予選は通過したものの、決勝レースでは5周目にサスペンショントラブルが発生し、リタイアとなりました。これが、ベラシ・F1 70、そしてシルビオ・モーザー・レーシングチームのF1における最後のレースとなりました。

ベラシ・F1 70は、F1の歴史において、まばゆい活躍を見せたマシンとは言えません。わずか2回の予選通過、そして完走することなく終わってしまったレースは、チームの資金力や技術力の限界を露呈したと言えるでしょう。しかし、独自のF1マシンを開発し、世界最高峰のレースに挑んだ彼らの挑戦は、F1の歴史において、小さなながらも重要な足跡を残しました。限られた資源と技術の中で、F1という舞台に挑んだ彼らの情熱は、今もなお語り継がれるべき出来事と言えるでしょう。このマシンの存在は、F1における挑戦と挫折、そしてプライベーターチームの苦労を象徴する一つの物語として、記憶されるに値すると言えるのではないでしょうか。

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