ベラ・ダヴィドヴィチ

ベラ・ダヴィドヴィチ：ショパン解釈の巨匠、そして教育者

ベラ・ミハイロヴナ・ダヴィドヴィチは、1928年アゼルバイジャンのバクーに生まれたユダヤ系のピアニストです。幼い頃から類まれな才能を示し、6歳でピアノを始めると、わずか3年後にはベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番をオーケストラと共演するなど、早くから注目を集めました。

その後、モスクワに移り、本格的な音楽教育を受けます。才能は開花し、1949年には、数々の名だたるピアニストが名を連ねる第4回ショパン国際コンクールで優勝。同年のモスクワ音楽院卒業と合わせ、その名を世界に知らしめました。

ソビエト連邦と東欧諸国で成功をおさめた彼女は、モスクワ音楽院で教鞭を執りながら、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団との共演など、演奏活動も精力的に行いました。

私生活では、ヴァイオリニストのユリアン・シトコヴェツキーと結婚し、後に著名なヴァイオリニストとなるディミトリ・シトコヴェツキーをもうけました。

1978年、ダヴィドヴィチはアメリカ合衆国に亡命し、米国籍を取得。1982年からはニューヨークのジュリアード音楽院で教鞭を取り始めました。この頃より演奏活動は減少しましたが、その影響力は衰えることはありませんでした。

彼女の演奏は、安定した技術とスケールの大きさに加え、独特の美しさで高く評価されていました。特にショパン作品への造詣は深く、ショパンの専門家として広く知られていました。

興味深いエピソードとして、ロシアの著名ピアニスト、ラザール・ベルマンが「私より彼女のほうがショパンは上手い」と発言したことがあり、その演奏技術の高さを物語っています。ショパンだけでなく、スクリャービンやプロコフィエフの作品も得意とし、フィリップスレーベルを中心に多くのCDをリリースしました。ショパンのピアノ協奏曲全曲、バラード、即興曲など、彼女の演奏による貴重な録音が数多く残されています。

ダヴィドヴィチの功績は演奏活動だけではありません。彼女は多くの優れたピアニストを育成した名教師としても知られています。アンドラーシュ・シフ、ショシャナ・ルディアコフ、ジュリア・ジルバーキット、マキシム・モギレフスキー、長島達也、クイン・グエンなど、世界的に活躍する多くのピアニストが彼女の教え子です。

ベラ・ダヴィドヴィチは、類まれな才能と情熱をもって、ショパン音楽の世界を深く探求し、後進の育成にも尽力しました。彼女の功績は、数々の名演と、世界中に羽ばたいた多くの弟子たちによって、これからも語り継がれていくことでしょう。彼女の演奏は、時代を超えて多くの人々を魅了し続け、音楽史に大きな足跡を残したと言えるでしょう。

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