ベルナルト・ボルツァーノ

ベルナルト・ボルツァーノ

ベルナルト・プラシドゥス・ヨハン・ネポムク・ボルツァーノ（Bernard Placidus Johann Nepomuk Bolzano）は、1781年10月5日にチェコのプラハに生まれた哲学者、数学者、論理学者、宗教学者です。彼は1837年に発表した著作『知識学 Wissenschaftslehre』において、客観主義的な論理学を打ち立て、多くの後続の思想家に影響を与えました。ボルツァーノの人生は、家族背景、学問への熱意、そして過酷な境遇によって形成されました。彼の功績は、その生前にはあまり評価されませんでしたが、現在では近代思想における重要人物と見なされています。

生い立ちと教育

ボルツァーノは父がイタリア人で、母がドイツ語を話す商人の娘という家庭に生まれました。両親はカトリック信者であり、商人としての生活を営んでいました。プラハ大学に通い、カトリック神学、数学、形而上学、物理学を学ぶ中で、ライプニッツやクリスティアン・ヴォルフといった哲学者の思想に触れ、後にはカントの研究にも取り組みました。彼が1804年に発表した論文『初等幾何学の2、3の対象に対する考察』で学位を取得した後、彼の関心は客観的な論理と反カント的な哲学に移行しました。

教職と追放

大学卒業後の1805年からボルツァーノはプラハ大学で宗教学を講義しましたが、その講義内容がチョコスロバキアで禁じられていた啓蒙思想に基づいていたため、次第に彼の立場は危険視されるようになりました。1820年には、チェコの独立運動への関与を理由に大学から追放され、その後の宗教に関する講演や著作も制限されることとなりました。この頃、彼は母を失うなどの不幸に見舞われ、困窮した生活を余儀なくされました。

研究活動と支援者

1823年、ボルツァーノはプラハの商人の妻であるアンナ・ホフマンと出会います。彼女は彼に精神的かつ経済的な支援を提供し、ボルツァーノは研究を続けることができました。この支援は彼女が亡くなる1842年まで続き、その時期に彼は多くの重要な著作に取り組むことができました。彼は既存のカント哲学やドイツ観念論に反対する立場をとり、社会や国家の在り方についても考察しました。

特に1837年に発表された『知識学』では、命題、真理、表象についての研究を展開し、学問の基礎を体系化しました。この著作はボルツァーノの客観主義的な論理学の集大成と言える重要な作品です。彼の当時の講義用に編纂した『宗教学教科書』もまた一つの成果ですが、大学から追放された影響で発刊が制限されました。

晩年と影響

1848年、ボルツァーノは『無限の逆説』を執筆し、無限の概念を数学に取り入れました。この著作もまた彼の重要な業績です。しかし、彼はその数日後、風邪をこじらせ急速に体調が悪化し、同年12月18日に67歳で亡くなりました。

生前、彼の思想はあまり理解されず、その業績は評価されませんでしたが、亡くなった後、彼の功績はフランツ・ブレンターノやエトムント・フッサールといった哲学者によって再評価され、特に数学の領域では「ボルツァーノ＝ワイエルシュトラスの定理」のような重要な結果を残しています。現代においてボルツァーノは重要な論理学者および数学者として認識され、彼の名は小惑星(2622) Bolzanoに名を刻まれました。

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