ベルノ店

ホンダベルノ店（ホンダ ベルノてん）は、本田技研工業が1978年（昭和53年）から2006年（平成18年）にかけて日本国内で運営していた自動車販売ネットワークの一つです。およそ28年間にわたり、ホンダの国内販売戦略において独特の役割を果たしました。

この販売チャネルは、初代プレリュードの市場投入に合わせて企画され、1978年11月に正式に開設されました。これは、後に設立されるプリモ店（1985年設立）やクリオ店（1984年設立）に先行するものであり、ホンダの旧3チャンネル体制の先駆けとなりました。イメージカラーには緑色が採用され、「クルマが、個性になる。」というキャッチコピーのもと、特にスポーティなモデルや個性的なデザインの車種、そしてSUVを中心としたラインナップを展開したことが大きな特徴です。

初期のシンボルマークは、「VERNO」の頭文字「V」をモチーフにしたデザインでした。「V」の左側が赤色、右側が3本の緑色のラインで表現されており、このデザイン要素は後にプリモ店やクリオ店のシンボルマークにも引き継がれました。

ベルノ店は、ホンダのディーラーとして初めて「販売責任地域」（PMA：Primary Market Area）という考え方を導入した点でも特筆されます。これは、販売店が特定の地域において、より積極的かつ責任を持って製品の販売活動を行うというものです。これにより、当時の日本の自動車販売で一般的であった、担当者が顧客宅を訪問して販売するスタイルから脱却し、顧客が店舗を訪れて購入する店頭販売を主軸とする販売手法を確立しました。

取り扱い車種としては、開設のきっかけとなったプレリュードをはじめ、バラード、CR-X、インテグラ、NSX、S2000といったスポーティカー、あるいはCR-V、MDX、エレメント、HR-VなどのSUVがベルノ店の専売車種として特に知られています。これらの車種は、個性を重視する顧客層からの支持を得て、ベルノ店のイメージを形成する上で重要な役割を果たしました。ただし、時期によっては、インスパイア、フィット、ステップワゴン、オデッセイなど、他の販売チャネル（プリモ店、クリオ店）とも共通で販売される併売車種も多数存在しました。

2000年代に入り、ホンダは国内販売網の効率化と顧客利便性の向上を目指し、チャネル統合を進めます。その結果、2006年3月1日からは、ベルノ店を含む既存の3系列全ての店舗で、車種の限定なくホンダが販売する全ての乗用車を取り扱う「全店全車種併売」体制へと移行しました。これにより、これまでプリモ店が主に担当していた軽自動車の取り扱いも開始されました。そして、同年7月13日をもって、ベルノ店、プリモ店、クリオ店の各名称は廃止され、「Honda Cars店」という新たな統一ブランドのもとに統合されました。ホンダベルノ店は、その役目を終えましたが、ホンダのディーラー網におけるユニークな販売戦略や個性的な車種展開を行ったチャネルとして記憶されています。

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