ベントレー・コンチネンタルR

ベントレーコンチネンタルRとその系譜：ラグジュアリークーペの進化

ベントレーモーターズが1991年から2002年にかけて生産したコンチネンタルRは、同社の歴史において重要な位置を占めるモデルです。ロールスロイスとの合併解消後、初めて独自開発されたモデルとして、ベントレーの技術力の高さとブランドアイデンティティを明確に示しました。当時、ベントレーにおける最高出力、最高価格モデルという地位も確立していました。

コンチネンタルRの誕生とデザイン

その起源は1984年、パリのサロン・アンテルナショナル・ド・ロトで発表されたコンセプトカー「プロジェクト90」に遡ります。このコンセプトカーが受けた熱烈な歓迎を受けて、コンチネンタルRの開発が本格化しました。ベースとなったのはベントレー・ターボRのプラットフォームですが、新たにデザインされたクーペボディが組み合わされました。

スタイリングは、ジョン・ヘファーマンとケン・グリーンリーによって手がけられ、滑らかな曲面を特徴とする、当時としては斬新なデザインが採用されました。ロールスロイスの直線的なデザインとは対照的に、わずかに湾曲した面は、より流麗でスポーティーな印象を与えます。空気抵抗係数Cd値は0.465と、当時の標準的な数値ではありましたが、それまでのベントレーモデルと比較すると大幅な改善がなされました。特徴的なデザイン要素としては、サッシュレスドア（窓枠のないドア）、後部に取り付けられた控えめなスポイラー、そして18インチのアロイホイールなどが挙げられます。

パフォーマンスとメカニズム

コンチネンタルRには、ベントレー・ターボRと同じ6.75リットルV8ツインターボエンジンが搭載されました。最高出力は242kW、最大トルクは610Nmに達するパワフルなエンジンでしたが、当時のロールスロイスは公式な性能数値の発表を控えていました。トランスミッションには、当時としては革新的なGM製の4L80-E 4速オートマチックトランスミッションを採用、前輪にはベンチレーテッドディスクブレーキが装備されました。最高速度は233km/h、0-97km/h加速は6.6秒と、当時の高級車の中でもトップクラスの性能を誇りました。1992年当時のアメリカでの価格は27万1780ドルと、その高価格もまた、モデルの希少性と高級感を際立たせていました。

バリエーションモデル

コンチネンタルRは、その後のモデルチェンジや派生モデルの登場を通して、更なる進化を遂げていきました。主なバリエーションモデルとして、以下が挙げられます。

コンチネンタルS: インタークーラーを追加した限定生産モデル。わずか37台が生産された後、インタークーラーは標準装備となりました。
コンチネンタルRマリナー: より強力なエンジンを搭載したモデル。最高出力は313kW、最大トルクは881Nmに達し、最高速度は274km/hにまで向上しました。
コンチネンタルT: スポーティーなハンドリングとハイパワーを重視したモデル。ホイールベースを短縮し、よりアグレッシブなデザインとされました。インテリアは、コンチネンタルRのウッド仕上げとは異なり、クローム仕上げが採用されました。
コンチネンタルTマリナー: コンチネンタルTをベースに、サスペンションを改良し、ハンドリング性能を高めたモデル。
* コンチネンタルSCセダンカ: 73台限定生産された特別なモデル。コンチネンタルTをベースに、着脱可能なグラスサンルーフが装備されました。

生産台数と遺産

コンチネンタルRとその派生モデルは、その限定生産性と高い性能から、現在ではコレクターズアイテムとしての価値も高く評価されています。生産台数は、コンチネンタルRとコンチネンタルSを合わせて1504台、コンチネンタルTとその派生モデルを含めると合計で約1000台程度と非常に希少です。この希少性こそが、コンチネンタルRを伝説的なモデルたらしめているのです。コンチネンタルRは、ベントレーのアイデンティティを築き上げただけでなく、現代のラグジュアリーカーのデザインや性能に大きな影響を与えたモデルと言えます。その歴史と技術的革新は、現代の自動車業界においても高く評価されており、今後もコレクターや自動車愛好家から熱い視線を注がれ続けるでしょう。

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