ベントレー・6½リットル

ベントレー・6½リットル：1920年代を代表する英国高級車の魅力

ベントレー・6½リットルは、ベントレーモータースが1926年から1930年にかけて製造した、まさに英国の伝統と技術の粋を集めた高級乗用車です。その威風堂々たる風格と高い走行性能は、当時の人々を魅了しました。本稿では、この名車の詳細について探ります。

強心臓：6.6L直列6気筒エンジン

6½リットルの中核を担うのは、排気量6,597ccの直列6気筒エンジンです。基本設計は、先行モデルであるベントレー・3リットルの6気筒版と言えるでしょう。内径100mm、行程140mmという大きなボアとストローク、4.4という圧縮比からなるこのエンジンは、最高出力140馬力を発生。当時の技術水準から見れば圧倒的なパワーを誇り、最高速度は84mph（約135km/h）に達しました。スムーズな回転と力強いトルクは、高級車としての風格をさらに高めていました。

走りを支える堅牢なメカニズム

シャシーは、3リットルモデルと共通の設計思想を受け継いでいます。ホイールベースは3352.8mmとゆったりとした設計で、乗員に快適な空間を提供しました。トランスミッションは4速マニュアルで、ドライバーはダイレクトな操作感を楽しむことができました。

スーパースポーツモデル「スピード6」

6½リットルには、よりスポーティな走りを求める顧客向けに「スピード6」というモデルが用意されました。これは、3リットルモデルに設定されていた「スーパースポーツ」モデルと同様の位置づけです。外観上の違いはほとんどありませんが、ノーマルモデルの青いエンブレムが、スピード6では緑色になっていることで区別できました。より高性能なチューニングが施されており、よりダイナミックな走りを実現していたと推測されます。

希少な存在：限定された生産台数

6½リットルとスピード6を合わせた総生産台数は545台と、非常に限られています。この希少性も、現在このモデルが高く評価される理由の一つと言えるでしょう。

英国自動車史における位置づけ

ベントレー・6½リットルは、1920年代の英国自動車産業において、その高い技術力とラグジュアリーなデザインで大きな成功を収めました。ロールスロイスと並ぶ英国を代表する高級車メーカーとして、ベントレーブランドの地位を確立する上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。現代においても、その高い歴史的価値と稀少性からコレクターズアイテムとして人気を集めています。その洗練されたデザインと力強い走りは、今もなお多くの自動車愛好家を魅了し続けています。

参考文献

『ワールド・カー・ガイド27 ロールス・ロイス&ベントレー』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-166-8

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