ベーゼンドルファー

ベーゼンドルファー・クラヴィアファブリックの歴史と特徴

L. ベーゼンドルファー・クラヴィアファブリック（L. Bösendorfer Klavierfabrik）GmbHは、オーストリアに本拠を置く名門ピアノ製造会社です。2008年からはヤマハの完全子会社となっていますが、そのルーツは1828年にさかのぼります。創業者のイグナーツ・ベーゼンドルファーがウィーンにてフォルテピアノの工房を継承し、独自のスタイルで高品質な楽器を制作してきました。

創業と歴史的背景

ベーゼンドルファーの最初のモデルは全木製フレームと革製ハンマーを備えたウィーン式フォルテピアノであり、音域は6オクターヴ半でした。19世紀にかけての革新期間には、鉄製フレームの導入やハンマーの素材変更といった大きな変革がありました。その結果、19世紀末に現在の代表作「モデル290 インペリアル」の基礎が築かれました。

このモデルはウィーン式の設計を引き継ぎつつも、現代の音楽スタイルに適応した独特のデザインが特徴です。歴史の中で、ベーゼンドルファーは多くの名だたる帝室や王室の信任を受けるとともに、産業博覧会での高評価も得ましたが、第二次世界大戦後に経営難に直面したこともありました。2002年にオーストリアの銀行グループにより経営権が回復されたものの、その後再び困難に陥り、最終的にヤマハの傘下として新たな道を歩むことになります。

独自の製品ライン

モデル290 インペリアル

ベーゼンドルファーのフラッグシップモデルである「モデル290 インペリアル」は、標準の88鍵に加えて4〜9組の弦が張られており、音域が通常よりも低いハ音を下回っています。これにより音色が非常に豊かでありながら、弾き手は高音とのバランスに注意を払う必要があります。音色は至福の響きをもたらし、演奏者にとって挑戦的でありながら魅力的な楽器として広く知られています。

コンサーヴァトリーシリーズ

教育機関向けに設計されたコンサーヴァトリーシリーズは、価格を抑えつつも品質を保つために生産工程の効率化を図っています。これにより、ベーゼンドルファーの高級感を持ちながらも、より多くの教育現場に導入されることが可能となりました。

特別限定モデルとデザインモデル

特別限定モデルも多く、フランツ・シューベルトやショパンにちなむモデルなどがあります。デザインモデルでは、著名な建築家によるユニークなピアノが制作されており、中でもハンス・ホラインが手墨したピアノは非常に高価でコレクターアイテムとなっています。

名声と愛用者

19世紀において、フランツ・リストが作品を演奏する際に耐え抜いた性能から名声を得たベーゼンドルファーは、ピアニストたちからも絶大な支持を受け続けています。ジャズ界のオスカー・ピーターソンや近年ではアンドラーシュ・シフ、パウル・バドゥラ＝スコダなどが愛用しています。また、ウィーン・ベートーヴェン国際ピアノコンクールでは、使用ピアノがベーゼンドルファーに限られていることからも、その地位の高さが伺えます。

結論

L. ベーゼンドルファー・クラヴィアファブリックは、クラシックからジャズに至るまで、多様な音楽シーンで活躍し続けるピアノメーカーです。その高い技術と洗練されたデザインは、未来にわたっても多くの音楽家にとっての憧れであり続けることでしょう。

もう一度検索