ペトロ (通貨)

ペトロ（Petro）は、ベネズエラ政府が発行した暗号通貨です。2017年12月3日にニコラス・マドゥロ大統領によって導入が発表され、国家が発行する暗号通貨としては世界初の試みとして注目されました。

概要

ペトロは、ベネズエラの豊富な地下資源、特に原油を裏付けとするとされましたが、実際にはそれらの資源との直接的な交換は保証されておらず、制度的な透明性にも欠けていました。当初のレートは1ペトロ＝60アメリカ合衆国ドルと設定されました。

ベネズエラは当時、深刻なハイパーインフレーションに苦しんでおり、政府はペトロを国際的な決済手段として利用することを期待していました。しかし、国際的な取引に応じる国は現れず、ペトロは国内での流通に重点を置かれることになりました。政府はペトロの普及を促進するために様々な措置を講じましたが、国内市場でもペトロの価値は下落し続け、2020年1月には公定価格の半額で取引される状況となりました。

利用が低迷する中、政府による利用促進策も効果を発揮せず、ペトロは2024年1月15日をもって運用を停止しました。残ったペトロトークンは、ベネズエラの現地通貨であるボリバルに交換されました。

沿革

ペトロの導入から廃止までの主な出来事は以下の通りです。

2018年10月1日：2018年11月5日からのペトロの販売を発表。
2018年10月5日：パスポートの発行手数料の唯一の支払い手段としてペトロが指定され、11月1日から実施。
2019年12月：公務員や年金受給者への年末ボーナスがペトロで支払われる。
2020年4月：新型コロナウイルス感染症の治療・対策に従事する医療従事者へのボーナスがペトロで支払われる。
* 2024年1月15日：ペトロの運用が停止され、廃止となる。

アメリカ合衆国の反応

アメリカ合衆国は、ペトロの導入当初からその正当性に疑問を呈していました。

2018年1月、アメリカ合衆国財務省は、ペトロの発行がベネズエラに対する制裁措置に違反する可能性があると警告しました。当時のドナルド・トランプ大統領は、ペトロがベネズエラへの制裁を回避するための手段として設計されていると批判しました。

2018年3月19日には、アメリカ人またはアメリカ国内でのペトロの取引を禁止する大統領令が発効されました。

ブルッキングス研究所は、ペトロを「外貨準備を創出するための欺瞞的な手段」と批判し、「基軸通貨をほとんど持たない独裁国家がペトロのような手段に訴えることは驚くべきことではない」と述べました。また、ペトロの販売が暗号通貨全体の評判を傷つけ、制裁対象国が同様の不正な戦略を追求する可能性を示唆し、その危険性を指摘しました。

ペトロは、ベネズエラ政府の経済政策の一環として導入されましたが、その不透明性と実態の伴わない設計により、国内外からの信頼を得ることができず、最終的に廃止されることとなりました。

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