ペドロ・コスタ

ペドロ・コスタ：リアリズムを追求するポルトガルの映画監督

ペドロ・コスタは、1959年12月30日にポルトガルのリスボンで生まれた映画監督です。彼は、単なるストーリーテラーとしてではなく、社会の周縁に生きる人々の姿を、深く、そして繊細に捉える映像作家として知られています。

初期のキャリアと映画への転身

コスタは、リスボン大学で歴史を専攻していましたが、その興味は映画へと移り、リスボン演劇・映画学校に編入しました。そこでは、ポルトガルの著名な映画監督パウロ・ローシャなどから指導を受けました。助監督としての経験を積んだ後、1989年に初の長編映画『血』で監督デビューを果たします。

ドキュメンタリーと劇映画の融合

コスタの作品の特徴は、ドキュメンタリーと劇映画の境界線を曖昧にすることにあります。2000年に制作された『ヴァンダの部屋』は、リスボンのスラム街に暮らすヘロイン中毒の女性ヴァンダ・ドルアルテの日常を追った作品ですが、フィクションのようなドラマ性も持ち合わせています。この作品は、2002年のカンヌ国際映画祭でフランス文化賞を受賞し、国際的な注目を集めました。

また、2001年には、フランスの映画作家ストローブ＝ユイレの編集作業を捉えたドキュメンタリー『あなたの微笑みはどこへ隠れたの?』を制作し、映画制作の現場を深く掘り下げました。2006年の『コロッサル・ユース』では、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されるなど、国際的な映画祭で高い評価を得ています。

社会の周縁を生きる人々への眼差し

コスタの作品には、社会の周縁に生きる人々への温かい眼差しが込められています。2009年の『何も変えてはならない』では、フランスの女優ジャンヌ・バリバールの歌手活動を捉え、彼女の芸術への情熱を映し出しました。また、2014年の『ホース・マネー』や2019年の『ヴィタリナ』では、ポルトガルの移民の過去と現在を、詩的な映像美で描き出しています。

教育活動と影響

2010年6月には、東京造形大学の客員教授に就任し、次世代の映画作家の育成にも貢献しました。彼の作品は、多くの映画監督や映像作家に影響を与え続けており、現代映画の重要な潮流の一つとなっています。

ペドロ・コスタは、常に新しい表現方法を模索し、社会に対する深い洞察と、人間の内面を繊細に描き出すことで、世界中の観客を魅了し続けています。

フィルモグラフィー

血 O Sangue (1989年) - 監督・脚本
溶岩の家 Casa de Lava (1995年) - 監督・脚本
骨 Ossos (1997年) - 監督・脚本
ヴァンダの部屋 No Quarto da Vanda (2000年) - 監督・脚本・撮影
あなたの微笑みはどこへ隠れたの? Où gît votre sourire enfoui? (2001年) - 監督・撮影
コロッサル・ユース Juventude Em Marcha (2006年) - 監督・脚本・撮影
世界の現状 O Estado do Mundo (2007年) - 「タラファル」監督・撮影
何も変えてはならない Ne Change Rien (2009年) - 監督・撮影
ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区 Centro Histórico (2012年) - 「スウィート・エクソシスト」監督・脚本
ホース・マネー Cavalo Dinheiro (2014年) - 監督・撮影
* ヴィタリナ Vitalina Varela（2019年）- 監督

もう一度検索