ペリーノ・デル・ヴァーガ

ペリーノ・デル・ヴァーガ（Perino del Vaga）、本名ピエロ・ボナッコルシは、16世紀のイタリアで活躍した画家です。1501年にフィレンツェで生まれ、1547年にローマで亡くなりました。彼の人生は、芸術的な才能と、社会の激動に翻弄された波乱に満ちたものでした。

デル・ヴァーガの幼少期は、決して恵まれたものではありませんでした。父親は賭博で財産を失い、フランス軍の兵士となり、実母は彼が2歳の時に亡くなります。その後、継母に育てられ、薬屋で働いた後、無名の画家、アンドレア・デ・チェーリの助手として絵画の世界に入りました。11歳からは、より有名なリドルフォ・ギルランダイオのもとで修業を積みました。

ローマへ移ったのは、無名の画家ヴァーガを手伝うためでした。この時の縁から、デル・ヴァーガと呼ばれるようになりました。ローマでは、ラファエロの工房で、ヴァチカン宮殿の装飾画制作に助手として参加。また、ラファエロの弟子であるジョヴァンニ・ダ・ウーディネの助手としても働き、その才能を徐々に開花させていきました。彼は装飾画の分野で頭角を現し、多くの注文を得るようになります。1520年からは、ローマのパラッツォ・バルダッシーニの装飾画をダ・ウーディネらと共に手がけました。

1523年、ローマでペストが流行したため、デル・ヴァーガは一時フィレンツェへ移ります。この地で、ロッソ・フィオレンティーノらの影響を受け、独自の画風を形成しました。1525年にローマへ戻り、結婚。しかし、1527年のローマ劫掠によって、ローマの街は荒廃します。その後、彼はジェノヴァ共和国の実力者アンドレア・ドーリアに招かれ、ジェノヴァへ移住しました。

ジェノヴァでは、ドーリアの別邸であるヴィラ・デル・プリンチペの装飾を手がけるなど、重要な仕事を任されました。その後、ピサに家を購入し、妻をローマから移住させ、1537年からはしばらくピサで生活。1539年に再びローマへ戻り、数多くの教会の装飾画を手がけました。しかし、1547年、結核によりローマで生涯を閉じました。

デル・ヴァーガの作品は、ラファエロやミケランジェロの影響を受けつつも、独自の色彩感覚と装飾的なスタイルが特徴です。彼の描いたフレスコ画や装飾画は、ルネサンス期のイタリア美術を語る上で、欠かせない作品群と言えるでしょう。彼の生涯は、時代の波に翻弄されながらも、自身の才能を信じ、芸術に情熱を注ぎ続けた画家の姿を伝えています。彼の作品は、今日においても多くの人々を魅了し、その芸術的遺産は、後世の画家たちに多大な影響を与え続けています。

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