ペール・オスベック

ペール・オスベック（1723年5月9日 - 1805年12月23日）は、18世紀のスウェーデンを代表する博物学者であり、敬虔な牧師でもありました。特に、近代植物学の父として知られるカール・フォン・リンネのもとで学び、「リンネの使徒たち」と称される、世界各地を探検し自然界の知識を広めた一団の一員として重要な足跡を残しました。彼の活動は、当時の科学的世界に大きな貢献をもたらしました。

オスベックは、現在のスウェーデン南西部、ヴェステルイェートランド地方の小さな村、ホーランダ・ソッケンで生を受けました。若くして学問を志し、1745年にウプサラ大学に入学します。ここで彼は、後に彼の運命を決定づける師、カール・フォン・リンネと出会いました。リンネは、分類学体系を確立し、多くの探検家や博物学者を世界各地に派遣して、未知の生物や自然現象を調査・採集させる「使徒たち」のネットワークを築いていました。オスベックもその才能を見出され、リンネの熱心な学生の一人となりました。

博物学者としての研鑽を積んだ後、オスベックは壮大な旅に乗り出します。1750年から1752年にかけて、彼はスウェーデンの東インド会社船に乗り込む船上の牧師として、はるか東アジアを目指しました。この航海で、彼は当時ヨーロッパにはほとんど知られていなかった中国南部、特に広東周辺地域や、インドネシアのジャワ島などを精力的に訪れました。彼の主要な任務は、もちろん信仰上の務めを果たすことでしたが、同時に彼は師リンネの指示のもと、熱心に博物学的な調査を行いました。特に植物の採集に力を入れ、未知の植物の標本を次々と集めていきました。この二年間にわたる探検の末、彼は実に900種にも及ぶ新種植物の標本や種子などをスウェーデンに持ち帰ることに成功しました。これらの資料は、リンネが進めていた分類学研究にとって計り知れない価値を持つものでした。

祖国に帰還したオスベックは、自身の東インドでの経験を詳細に記録した旅行記『東インド旅行の日記』を1757年に出版しました。この著作は、当時の東アジアの自然、地理、人々の暮らし、文化、言語など、多岐にわたる観察記録を含んでおり、ヨーロッパの人々に極東の世界を紹介する貴重な資料となりました。この旅行記は大きな反響を呼び、すぐにドイツ語や英語にも翻訳され、広く読まれることとなりました。また、オスベックは博物学者としての活動と並行して、牧師としてのキャリアも着実に歩みました。1760年にはハッランド県のハッスロヴの教区司祭に任命され、その後も昇進を重ね、1773年には首席司祭、1778年には敬虔な学識が認められ神学博士の学位を授与されました。

オスベックは、その学術的な功績が認められ、1758年にはスウェーデン王立科学アカデミーの会員に選ばれました。さらに、ヨーテボリに設立されたKungliga Vetenskaps- och Vitterhetssamhället i Göteborg（ヨーテボリ王立科学・文学協会）の設立にも関与しました。彼の探検で得られた膨大な知識と標本は、スウェーデンの科学研究、特に植物学の発展に大きく貢献しました。彼の博物学への献身と業績を称え、ノボタン科に属するある植物群には、彼の名にちなんで「オスベッキア（Osbeckia）」という学名が与えられています。これは、今日まで彼の功績が記憶されている証でもあります。

著作

Dagbok öfwer en ostindisk resa åren 1750. 1751. 1752. Med anmärkningar uti naturkunnigheten, främmande folkslags språk, seder, hushållning. 1757
Fragmenta ichthyologiae Hispanicae. In: Nova Acta Physico-Medica Academiae Caesareae Leopoldino-Carolinae Naturae Curiosorum. Band 4, Nürnberg, 1770, S. 99-104

参考文献

* Lexikoneintrag im Nordisk familjebok (1876–1926)

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