ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY

ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY：伝説的歌姫の生涯と苦悩

2022年に公開されたアメリカ映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』は、世界的に有名な歌姫ホイットニー・ヒューストンの生涯を克明に描いた伝記映画です。幼少期から教会でゴスペルを歌い、類まれな才能を開花させたホイットニー。才能を見出したプロデューサーとの出会い、そして華々しいスターダムへの駆け上がり、その過程で経験した葛藤や苦悩が丁寧に描かれています。

ホイットニーは、母親であるシシー・ヒューストンの指導の下、幼い頃から音楽と深く関わってきました。ゴスペルの豊かな経験は、後にホイットニーの音楽性を形成する上で重要な役割を果たします。23歳で音楽プロデューサー、クライブ・デイビスに見出された彼女は、瞬く間にトップシンガーの座に上り詰め、才能と魅力で世界を魅了しました。

しかし、成功の裏には、数々の苦悩が隠されていました。父親ジョンをマネージャーに迎え、家族を養う責任を負うことになったホイットニー。親友でありアシスタントでもあったロビン・クロフォードとの関係、そしてジャーメイン・ジャクソンやボビー・ブラウンといった男性との交際。複雑な人間関係の中で、彼女は自身のアイデンティティと葛藤しながら、音楽活動に邁進しました。

映画『ボディガード』の主題歌の大ヒットは、彼女のキャリアに新たな高みをもたらしました。そして1992年、人気R＆B歌手ボビー・ブラウンと結婚。一人娘にも恵まれ、幸せな家族を築いたかに見えました。しかし、ボビーの浮気や裁判沙汰、父親による浪費癖など、私生活は様々な問題を抱えることとなり、ホイットニーは深い苦悩に苛まれます。

それでも幸せな家族像を追い求めるホイットニーでしたが、2000年には大麻所持で逮捕され、保護観察による治療を受けることとなります。薬物依存との闘い、そして2006年のボビーとの離婚。その後、2009年に復帰を果たすも、かつての圧倒的な歌唱力は失われていました。

2012年、48歳で彼女はホテルのバスルームで亡くなりました。死因はコカイン摂取による溺死と発表され、その早すぎる死は世界中に衝撃を与えました。映画は、全盛期のコンサートを思い起こしながら、人生の最後に思いを馳せるホイットニーの姿で締めくくられ、見る者の胸を打つと共に、才能と苦悩に満ちた彼女の人生を深く考えさせられます。

映画では、ナオミ・アッキーがホイットニー・ヒューストンを熱演。ホイットニーの才能、魅力、そして内面にある葛藤を繊細に表現しています。その他、スタンリー・トゥッチ、アシュトン・サンダース、タマラ・チュニーなど、実力派俳優陣の演技にも注目です。

批評家の評価は賛否両論ありますが、ホイットニー・ヒューストンの輝かしいキャリアと、その陰に隠された苦悩を描いた本作は、音楽史に名を刻んだ一人の女性の生涯を、深く理解する機会を与えてくれます。彼女の音楽と人生に感動し、そして彼女の苦悩に思いを馳せる、そんな時間を提供してくれる作品と言えるでしょう。

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