ホテイラン

ホテイランについて

ホテイラン（布袋蘭、学名：Calypso bulbosa var. speciosa）は、ラン科ホテイラン属に分類される地生の多年草です。主に本州の中部地方に分布し、亜高山の針葉樹林下に生育しています。この植物は、独特な花と葉の形状から、別名ツリフネランとも呼ばれています。ホテイランは、その美しさと独自性から、多くの観賞者を魅了していますが、環境の変化や人間活動の影響により、絶滅の危機に直面している種です。

特徴

ホテイランの最大の特徴は、独特な偽球茎の形状です。これらは楕円形に肥厚し、通常2~3節から成り立っています。偽球茎の先端部からは、1枚の葉と花茎が伸びます。葉は長さ1.5〜3cmの葉柄を持ち、卵状楕円形で長さ2.5〜5cm、幅1.5〜3cmの大きさです。これらの葉は、縦に5つの脈が目立ち、先端は鋭く、基部は心形をしています。葉の縁は波状に縮れ、表面には緑色に紫色の斑紋が見られ、裏面は紫色に変わります。

花茎は直立しており、高さは6〜15cm程度になります。淡茶色の膜質で作られた2つの鞘状葉を伴い、花期は主に5〜6月です。この花茎の先端部には、淡紅色の美しい1輪の花が咲きます。苞は広線形で、長さ1〜2.5cmの鋭尖頭型をしています。ホテイランの花には3枚の萼片と2枚の側花弁があり、これらは線状で反り返っています。特に唇弁は特徴的で、下垂した袋状に膨らみ、内面には淡褐色または濃紫色の斑紋があります。

生育環境

ホテイランは主に本州の中部地方の亜高山地域に自生し、針葉樹林の下で育ちます。こうした環境は湿度が高く、土壌が豊富であるため、ホテイランの成長に適していると考えられています。しかし、開発や気候変動などの外的要因がこの種の生育を脅かしています。

名前の由来

ホテイランという和名は、この植物の唇弁のふくらみが布袋の腹を思わせることから名付けられました。また、ツリフネランという別名は釣舟の形に似ていることから来的ています。属名のCalypsoは、ギリシャ神話に登場するアトラスの娘に由来し、生育地が秘匿されていることを意味しています。種小名bulbosaは「鱗茎状の」、変種名speciosaは「美しい」を意味します。

絶滅危惧種

ホテイランは環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に指定されています。この評価は、都道府県により異なり、埼玉県では絶滅危惧I類、東京都や山梨県などでは絶滅危惧IA類に分類されています。このように、いくつかの地域で特に保護が求められています。

基本種・ヒメホテイラン

ホテイランの基本種であるヒメホテイラン（学名：Calypso bulbosa var. bulbosa）は、主に青森県や北海道に分布しています。特に青森県ではヒノキアスナロ林下で見られます。ヒメホテイランは、唇弁の形状がホテイランと異なり、舷部からの距が突出しない点が特徴です。評価は絶滅危惧II類に分類され、保護の必要が強く求められています。

まとめ

ホテイランはその美しい花と独特な形状から、自然愛好家や植物研究者から注目を集めている魅力的な植物です。しかし、持続可能な生育環境の確保が難しくなっているため、積極的な保護活動が求められています。

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