ホノルル糖蜜流出

ホノルル糖蜜流出事故：1400トンの甘い災厄

2013年9月9日、ハワイ州ホノルル港で、未曽有の環境災害が発生しました。1400トンもの糖蜜が港湾に流出したのです。この事故は、老朽化したパイプラインの破損が原因でした。海上輸送会社であるマトソン社が責任を認めましたが、糖蜜が規制対象外であったため、同社もハワイ州政府も緊急時の対応マニュアルを保有しておらず、対応に苦慮しました。

事故の発覚と甚大な被害

糖蜜の流出は、港湾関係者によって発見されました。石油などとは異なり、糖蜜は粘性が高く、海中に急速に広がっていきました。ダイバーによる調査では、糖蜜が海底に沈殿し、酸素欠乏状態を引き起こしていることが判明。これにより、港湾周辺の海洋生物に壊滅的な打撃が及ぶ結果となりました。サンゴ礁の損傷、2万6千匹以上の魚類などの海洋生物の死滅が確認されています。事故当時、マトソン社はサトウキビから製造された糖蜜を、ハワイアン・コマーシャル・アンド・シュガー・カンパニーから受託し、本土への輸送を30年間も担っていました。週に1便の輸送を続けていた中での事故発生だったのです。

海流と天候がもたらした遅延

幸いにも、海流と天候条件が糖蜜の拡散を緩やかにしました。もし、無風状態や、海流が港湾内に糖蜜を閉じ込めるような状況であれば、被害は更に甚大になった可能性があります。しかし、それでも海洋環境への影響は深刻であり、環境回復には相当の時間を要すると考えられています。

事故後の規制強化

この事故を教訓に、ハワイ州は港湾における安全管理体制の抜本的な見直しを余儀なくされました。ハワイ州交通省は2013年9月20日、港湾施設におけるパイプラインを使用する全ての事業者に対し、定期的な検査の実施と、緊急時の対応計画の提出を義務付ける省令を発令しました。それまで、このような規制は存在しませんでした。

最初に提出された文書は、アレクサンダー&ボールドウィン社の関連会社であるカフルイ・トラッキング・アンド・ストレージ社のものでした。同社は、糖蜜の回収が事実上不可能であることを踏まえ、パイプラインの定期検査と、輸送作業の1時間ごとの監視体制の構築を計画に盛り込みました。事故は、適切な予防策と早期発見システムの欠如を浮き彫りにしたのです。

類似事故と教訓

歴史上、大規模な流出事故は他にも数多く発生しています。例えば、1814年のロンドンビール洪水、1919年のボストン糖蜜災害などが有名です。これらの過去の事故から学ぶべきことは多く、今回のホノルル糖蜜流出事故も、安全管理の重要性を改めて認識させる重大な事件となりました。2017年にはペプシ果物ジュース洪水も発生しており、食品関連の流出事故が後を絶たない現状を改めて認識する必要があります。

今後の課題

今回の事故は、糖蜜のような規制対象外の物質についても、安全管理体制を整備する必要性を示しました。また、緊急時における迅速かつ効果的な対応体制の構築も喫緊の課題です。ハワイ州政府は、再発防止に向けた取り組みを継続していく必要があります。そして、港湾関係者だけでなく、市民全体が、環境保全に対する意識を高めることが重要です。

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