ホホジロザメ

ホホジロザメ（Carcharodon carcharias）

ホホジロザメは、ネズミザメ目に属するサメで、唯一のホホジロザメ属の現生種です。一般に「白い死神」とも呼ばれ、その特徴的な形態と生態から多くの研究が行われています。このサメは、しっかりとした体型を持ち、鋭い正三角形の歯を持つことで知られています。ホホジロザメの体色は、背側が濃灰色から黒色、腹側が白色であり、見た目のコントラストが顕著です。

分布と生息環境

ホホジロザメは亜熱帯から亜寒帯に広がる海域に生息し、北はアラスカ、南は南アフリカやオーストラリアの海域で観察されています。日本近海にも生息しており、特にアザラシやオットセイの繁殖地近くで見られることが多いとされています。また、ホホジロザメが集まる特定の深海域もあり、その場所は「ホホジロザメ・カフェ」と名付けられています。

特徴

ホホジロザメは典型的な流線型の体形を持っており、尾鰭は三日月形をしています。全長は通常4.0-4.8メートルですが、最大全長としては最大で6.0-6.4メートルとされています。更に多くの研究から、最大で7メートル、体重が2,500キログラムを超える個体も捕獲されたことが報告されています。また、歯は長さ7.5センチメートルで、鋸歯状の縁を持つため、獲物を切り裂くのに適しています。ホホジロザメは獲物から約14キログラムの肉を一噛みで切り取る能力があります。

生態

ホホジロザメは主に沿岸域の表層で活動しつつ、深度250メートル以上の水深にも潜ることができます。特有の行動である「repetitive aerial gaping」では、海面に顔を出し、体を横に回転させながら口を開閉します。この行動は他のサメには見られません。また、ホホジロザメは奇網と呼ばれる熱交換システムを持つため、海水より高い体温を維持し、優れた運動能力を発揮することができます。最高時速25-35キロメートルでジャンプすることもあり、瞬時に高い速度が出せるのがこのサメの特異な特徴です。

食性

ホホジロザメは肉食性で、好物はイルカやアザラシなどの海棲哺乳類です。海鳥や小型魚類、死にかけのクジラの肉なども食べることがあります。体重の約30%の重さを食べると満腹になり、狩りは主に奇襲によって行います。南アフリカ沿岸では、時には海面から飛び出して獲物を捕えることが観察されています。このように巧妙にエネルギーを使いこなしつつ待ち伏せを行うのが特徴です。

繁殖

ホホジロザメは卵胎生で、胎内で成長した子供たちは未受精卵を食べて育ちます。妊娠の期間は不明ですが、雌は1度に2から15匹の子供を出産し、産まれた時の体長は1.2から1.5メートル程度です。幼体は魚を主に食べ、大きくなるにつれてより大きな獲物に目を向けるようになります。

天敵

ホホジロザメにはシャチや他の大型のサメが天敵となり得ます。特に、シャチはホホジロザメを捕食することも報告されていますが、巨体を持つホホジロザメ同士でも捕食行動が見られます。子供を連れたシャチは特に攻撃的で、ホホジロザメをターゲットにすることが観察されています。

人との関係

ホホジロザメは「人食いザメ」として知られ、多くの人身事故が報告されています。映画『JAWS』に登場したことから、一層その名声が高まりました。事故が発生する場所は主に海水浴場やサーフィン中で、人を獲物と誤認することが多いと考えられています。例えば、オーストラリアだけでも200年間に668件の事故があり、その中で191人が亡くなっています。

まとめ

ホホジロザメは独特な生態や行動を持ちつつ、時には人間に危害を加えることがある危険な捕食者です。その詳細な特性や行動についての理解は、今後の安全対策や研究のためにも重要です。繊細な生態系の一部をなすホホジロザメの保護や生態についての教育も欠かせません。

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