ホワイトホール

ホワイトホール：ブラックホールの反転？宇宙の謎めいた天体

一般相対性理論において、ブラックホールと対を成す存在として理論上提唱されているのが「ホワイトホール」です。ブラックホールが周囲の物質を吸い込むのに対し、ホワイトホールは物質を放出すると考えられています。この対称性は、ブラックホール解を時間的に反転させた解として得られるという数学的な性質に由来します。

ブラックホールとの関係性

ブラックホールは、その強力な重力によって光さえも脱出できない領域です。一方、ホワイトホールは、事象の地平線から物質を放出する天体として定義されます。両者の重力は同等とされており、ホワイトホールから放出された物質が再び引き戻され、ホワイトホールの外側にブラックホールを形成するという興味深い仮説も存在します。まるで、宇宙における物質の吸い込みと吐き出しを担う、双子の天体のような関係性と言えるでしょう。

ホワイトホールの実在性：未解明の謎

しかし、ホワイトホールの実在性は現在も未解明です。2006年に観測されたガンマ線バーストGRB 060614は、ホワイトホールを示唆する現象として注目されましたが、決定的な証拠とは言い切れません。

ホワイトホールの定義上、物質を放出し続けるとすれば、やがては物質が尽き消滅してしまうという問題点があります。「発見されていないのは既に消滅したから」という説明も過去にはありましたが、これはビッグバン以前からホワイトホールが存在しなければならないという矛盾を孕んでいます。

さらに、ブラックホールとホワイトホールがワームホールで繋がっているという仮説も提唱されています。この仮説では、ブラックホールに吸い込まれた物質が、ホワイトホールから放出されると考えられます。しかし、この仮説もブラックホールに吸い込まれた物質のその後を完全に説明できるわけではありません。

これらの矛盾や未解明な点から、現在ではホワイトホールは数学的な概念に過ぎず、現実には存在しないとする見方が主流となっています。

ブラックホール熱力学との関連性

ブラックホール熱力学では、ホーキング放射によってブラックホールが最終的に蒸発することが予言されています。この過程は時間反転に対して対称であるため、熱的平衡にあるブラックホールの時間反転解もまたブラックホール解であると解釈できます。この視点から見ると、ブラックホールとホワイトホールは、同じ天体の異なる側面として捉えることもできるかもしれません。

まとめ：未来への可能性

ホワイトホールは、一般相対性理論という枠組みの中で、宇宙の謎を解き明かす鍵となる可能性を秘めた、極めて興味深い天体です。その実在性はまだ証明されていませんが、ブラックホールとの関係性、そして宇宙の進化を理解する上で重要な役割を担っていると考えられています。今後の研究によって、ホワイトホールの謎が解き明かされることに期待が高まります。新たな観測データや理論的アプローチによって、この未解明の天体の正体が明らかになる日が来るかもしれません。

もう一度検索