ホンダ・イブ

本田技研工業製オートバイ「イブ」シリーズ：軽量性と進化の歴史

本田技研工業は、1980年代に女性をターゲットとした人気スクーター「イブ」シリーズを展開しました。イブシリーズは、優れた取り回しやすさと軽量ボディを特徴とし、多くのユーザーから支持を集めました。本稿では、イブシリーズの各モデルの特徴や歴史、そして後継モデルである「イブ パックス」と「パックスクラブ」について詳細に解説します。

イブ：軽快な走りと女性向けのデザイン

1983年9月、イブ（型式名：A-AF06）は、先行モデルであるスカイの後継として登場しました。49ccの2ストローク単気筒エンジンを搭載したスクータータイプの原動機付自転車で、その最大の特徴は軽量性です。キックスターターモデルは乾燥重量34kg、セルスターター併用モデルでも36kgと、当時の原付バイクとしては非常に軽量な設計がなされていました。全幅も590mmとコンパクトで、取り回しの良さは抜群でした。女性ライダーをターゲットとしたデザインと、取り回しの良さがセールスポイントとなり、多くの女性から支持を集めました。Vベルト式動力伝達を採用していましたが、固定式プーリーのため変速機構はありませんでした。さらに、女優の大原麗子さんがイメージキャラクターに起用され、話題となりました。

1984年には、乾燥重量を33kgまで軽量化した「イブ スマイル」が登場。イブは1985年にモデルチェンジするものの、「イブ スマイル」は1987年まで販売が継続されました。

イブ パックス：進化した性能と若年層へのターゲット変更

1985年6月、イブは「イブ パックス」（型式名：A-AF11）へとフルモデルチェンジされました。イブ パックスは、ターゲット層を女性から若年層へと変更。自動無段変速機（CVT）を採用した「イブ パックスS」と、無変速の「イブ パックス」の2種類がラインナップされました。「イブ パックスS」は最高出力が5.0psに向上し、より力強い走りを実現しました。一方、「イブ パックス」は最高出力が4.1psで、イブのコンセプトを受け継いでいました。乾燥重量は40kg台に増加しましたが、それでも当時のスクーターの中では軽量な部類でした。「パックス」という車名は、友達や平和を意味する言葉で、若年層への親しみやすさを狙ったネーミングです。

イブ パックスは、その後もカラーリング変更や限定車の追加などを経て、1987年に後継モデルとなる「パックスクラブ」へとバトンタッチしました。

パックスクラブ：さらなるパワーアップとデザイン刷新

1988年3月、「パックスクラブ」（型式名：A-AF14）が登場しました。パックスクラブは、車体外装のデザインを一新。エンジン出力は5.5psに向上し、さらに燃料タンク容量も3.0Lから3.6Lへと拡大されました。これらの改良により、より快適で力強い走行性能を実現しました。しかし、1989年には生産終了となりました。

イブシリーズのレガシー

イブシリーズは、軽量性と扱いやすさを重視した設計、そして時代に合わせてターゲット層や性能を進化させてきたモデルでした。漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』では、主人公・両津勘吉の同僚である本田速人の妹が「本田伊歩」という名前で登場し、イブシリーズへのオマージュが感じられます。また、映画『ポリスアカデミー2』にも登場しており、当時の人々の生活の中に溶け込んでいたことが伺えます。イブシリーズは、1980年代の日本のバイクシーンにおいて、重要な役割を果たしたモデルと言えるでしょう。

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