ホンダ・エルシノア

ホンダ・エルシノア：伝説の2ストロークデュアルパーパスモデル

ホンダが1970年代に製造・販売したオートバイシリーズ「エルシノア」は、同社初の本格的な2ストロークエンジンを搭載したモデルとして知られています。アメリカ・カリフォルニア州レイク・エルシノアのクロスカントリーレースに由来するこの名称は、シリーズ全体に冠せられました。

モトクロス競技用モデル：CRシリーズ

エルシノアシリーズの主力モデルは、モトクロス競技専用車「CRシリーズ」です。

エルシノア CR250M: 1972年9月発表。250ccクラスのワークスマシンRC250Mをベースに開発され、1977年までマイナーチェンジを繰り返しながら販売されました。

エルシノア CR125M: 1973年1月発表。125ccクラスの競技車両として、CR250Mと同様に1976年まで改良を重ね、販売されました。

CRシリーズは、当時盛んだったモトクロス競技において、高い競争力を発揮しました。しかし、1978年にはエルシノアの名を冠したモデルは生産終了し、シリーズは新たなモデルへと移行しました。

公道走行可能モデル：MTシリーズ

CRシリーズと並行して、公道走行可能なデュアルパーパスモデル「MTシリーズ」も展開されました。

エルシノア MT250/MT125: 1973年5月発表。250ccと125ccの2車種がラインナップされました。CRシリーズのエンジンをベースに、公道走行に必要な保安部品を装着。しかし、モトクロスレースへの参加も視野に入れ、部品の着脱を容易にする設計が施されていました。

MTシリーズは、日常使いとオフロード走行の両立を目指したモデルです。有名俳優のスティーブ・マックイーンをイメージキャラクターに起用するなど、積極的なマーケティングも行われました。

販売不振と生産終了

エルシノアシリーズは、海外輸出も展開されましたが、発売直後の第1次オイルショックや、当時まだ信頼性に欠けていた2ストロークエンジンのトラブルなどが重なり、販売は低迷しました。

そのため、1975年には、より信頼性の高い4ストロークエンジンを搭載したXL250/XL125にモデルチェンジされ、エルシノアの名を冠したモデルは生産終了となりました。しかし、MTという車名は後にMT50、そしてMTXシリーズとして、ホンダのオートバイ史に新たな足跡を残すことになります。

エルシノアの技術的特徴

エルシノアシリーズは、ホンダにとって初めての量産型2ストロークエンジン搭載モデルであり、同社の技術開発において大きな意味を持つシリーズでした。エンジンの開発には様々な困難が伴いましたが、技術革新の象徴として、当時のオートバイシーンに大きな影響を与えました。また、公道走行モデルにおいては、日常使いの容易さとオフロード走行の両立を図るため、エンジンのチューニングや潤滑方式に工夫が凝らされていました。

まとめ

ホンダ・エルシノアは、革新的な技術と積極的なマーケティングにも関わらず、時代背景や技術的な課題によって短命に終わったモデルです。しかし、その存在は日本のモーターサイクル史、そしてホンダの歴史において、重要な1ページを刻んでいます。 エルシノアは、技術の挑戦と、時代が求めるものとの葛藤を象徴する、伝説的なオートバイシリーズと言えるでしょう。

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