ホンダ・シャドウ

本田技研工業製オートバイ「シャドウ」シリーズ：歴史とモデルバリエーション

この記事では、本田技研工業（ホンダ）が製造販売してきたクルーザータイプのオートバイ、「シャドウ」シリーズについて、その歴史と様々なモデルバリエーションを詳細に解説します。シャドウシリーズは、アメリカンバイク特有のゆったりとしたライディングポジションと力強いエンジン、そして個性的なスタイリングで、長年に渡り多くのライダーを魅了してきました。

初代モデルとNV750カスタムからの進化

シャドウシリーズの始まりは、1982年12月17日に発売されたNV750カスタムに遡ります。北米市場を中心に展開されたこのモデルをベースに、ホンダはシャドウという名称を採用、デザインと機能性を大幅に向上させました。初代シャドウは、NV750カスタムのフレームと外装を一新。特徴的なのは、45度Vツインエンジンに位相クランクを採用したことで、クルーザーモデルとしては非常に振動が少ない滑らかな走りが実現されました。このモデルは、後のシャドウシリーズの礎を築いた重要なモデルと言えるでしょう。

シャドウ400/750と市場における地位確立

1997年、ホンダはシャドウ400とシャドウ750を発売します。これらのモデルは、車体構成の大部分を共有し、共通のスタイリングを採用。前輪17インチ、後輪15インチのホイールサイズも共通です。発売当初は、既に販売されていたスティードというチョッパーモデルと住み分けを図り、シャドウはよりクラシックな外装デザインを採用していました。しかしその後、ホンダはクルーザーモデルをシャドウシリーズに一本化していくことになります。シャドウ400/750に搭載されたエンジンはスティードのものをベースとしており、吸排気系の変更により出力向上を図っています。また、ワイドレシオのギアを採用することで、各ギアでの伸びやかな加速感を演出しています。特にシャドウ750はスティード600のエンジンのボアとストロークを変更、ギアを4速から5速へと変更するなど、さらなる改良が加えられました。

多様なバリエーションと進化：スラッシャー、ファントム、そしてフルモデルチェンジ

シャドウシリーズは、その後も様々なバリエーションモデルが追加・改良されていきます。2000年には、前輪19インチ、シンプルでスタイリッシュな外装を採用した「シャドウスラッシャー」シリーズが追加され、よりスポーティな選択肢を提供しました。特徴的なショートフェンダー、ローダウン、そして2本出しマフラーは、多くのライダーの注目を集めました。2003年にはシャドウ750がフルモデルチェンジ。新設計のフレーム、延長されたホイールベース、そして低くなったシート高により、より洗練された乗り味を実現しました。シングルキャブレター化されたエンジンは燃費の向上にも貢献。さらに、H・I・S・S（Honda Ignition Security System）も搭載されました。

2008年には、シャドウ750がマイナーチェンジを実施。同年10月にはシャドウ400がフルモデルチェンジを果たし、「クラシック」と「カスタム」の2つのバリエーションが設定されました。「クラシック」は大型フェンダー、「カスタム」は21インチフロントタイヤと小型フェンダーを装備するなど、それぞれ異なるデザインを採用。両モデル共に、電子制御燃料噴射（PGM-FI）化による環境性能の向上と低中速トルクの向上を実現しました。2009年には、シャドウ750をベースにブラックカラーで統一された「シャドウファントム」が追加され、ABS仕様もラインナップに加わりました。通常モデルのリヤブレーキが機械式ドラムブレーキであるのに対し、ABS仕様では油圧式ディスクブレーキが採用されました。2016年には、シャドウ400クラシックとシャドウ750ファントムの日本国内での販売が終了しました。

VTシリーズ：新たな選択肢と軽量化

2010年 3月には、シャドウシリーズの派生モデルとしてVT750Sが発売されました。北米ではSHADOW RSとして販売されたこのモデルは、先代シャドウをベースにチェーン駆動の採用、外装の簡素化などにより大幅な軽量化を実現。エンジン出力も変更され、ビギナーライダーにも扱いやすいモデルとして74万9700円という比較的抑えめの価格で販売されました。同年11月には、VT400Sも発売されました。VT750Sと同様の車体設計で、エンジンはシャドウ400シリーズから流用されています。これらのVTシリーズは、2014年に日本での生産を終了しました。

1100ccクラスとVT125シャドウ

ホンダは、1993年からアメリカで生産されていたシャドウ・エース(VT1100C2)を「シャドウアメリカンクラシックエディション」として日本市場に輸入販売しました。このモデルは1099ccのエンジンを搭載し、低回転域から強力なトルクを発揮しました。1998年には、限定300台で「シャドウエアロ」が輸入されました。よりクラシカルなデザインが特徴です。しかし、日本市場では1100ccクラスのシャドウは「シャドウ1100」として正式に発売されたことはありません。

ヨーロッパ市場向けには、125ccのVT125シャドウが生産されました。水冷90°V型2気筒エンジンを搭載したこのモデルは、日本には正規輸入されませんでした。

シャドウシリーズと仮面ライダー

シャドウシリーズは、人気特撮番組「仮面ライダー」シリーズにも登場しています。「仮面ライダーキバ」ではシャドウ750が、「仮面ライダーオーズ/OOO」ではシャドウファントムが、それぞれ劇中バイクとして用いられました。

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