ホンダ・シャリィ

ホンダ シャリィ/シャレット：ロングセラー軽二輪車の歴史

本記事では、本田技研工業が長年にわたって製造・販売していたオートバイ、シャリィ（Chaly）と、その姉妹車であるシャレット（Chalet）について解説します。シャリィは、特に初めてオートバイに乗る方にも扱いやすい設計と、家族で楽しめるバイクとして広く親しまれてきました。

シャリィ：手軽で便利な国民的バイク

1972年に発売されたシャリィは、「誰でも安心して乗れる、家族で楽しめるホームバイク」というコンセプトのもと開発されました。その特徴は、なんといっても低床設計にあります。40cmのまたぎ高さ、70cmのシート高は、当時としては非常に低く、誰でも容易に乗り降りすることができました。

車体には、低床バックボーンフレームを採用。サスペンションは、フロントがテレスコピック式、リアがスイングアーム式で、安定した走行を実現していました。タイヤサイズは前後とも3.50-10インチ。ブレーキは前後ともリーディングトレーリング式で、最小回転半径はわずか1.6mと、取り回しにも優れていました。

搭載エンジンは、スーパーカブと基本設計を共有する空冷4ストロークOHC単気筒エンジン。排気量は、50cc（CF50）と72cc（CF70）の2種類が用意され、50ccモデルには2速または3速のオートマチックトランスミッションも設定されていました。全モデルに自動遠心クラッチを採用し、操作性の簡素化が図られていました。

発売当初は「シャリイホンダ」という名称でしたが、その後「シャリイ」「シャリィ」「シャリー」と名称が変更されています。これは、長年にわたる販売期間中に何度かモデルチェンジが行われたためです。

シャリィのモデルチェンジと進化

シャリィは、発売後も数々のマイナーチェンジを経て進化を遂げています。主な変更点は以下のとおりです。

1976年: CF50-Iの廃止、CF70の改良、大型フロントバスケットの追加、ブレーキライニングの摩耗表示の追加など。
1979年: エンジントルク特性の変更、燃料計の追加、方向指示器戻し忘れ防止ブザーの追加など。
1981年: 大型フロントバスケットの標準装備化、車名変更（シャリイ50、シャリイ70）、50ccモデルに3速ATモデル追加、エンジンの性能向上、燃費向上など。
1983年: シャリイ50 ATの廃止、マニュアルトランスミッションの変更、燃料計の大型化、エンジンの性能向上、タイヤのチューブレス化など。シャリイ70は最終モデル。
1983年11月: シャリイ50に速度警告灯の追加。
1988年: シャリイ70の廃止、シャリイ50の名称変更（シャリィ50）、排出ガス規制適合、デザイン変更など。
1992年、1993年: カラーリングやスタンド形状の変更。
1995年: 車名変更（シャリー）、カラーリング変更。
1997年: カラーリング変更。
1999年: 生産終了。

各モデルチェンジでは、燃費向上、出力向上、デザイン変更、安全機能の追加などが行われ、時代のニーズに対応した進化を遂げていきました。

シャレット：シャリィのスクーター版

1978年には、シャリィとほぼ同じ車体を持つスクータータイプのシャレット（Chalet）が発売されました。シャリィと共通のフレームやサスペンションを採用しながらも、エンジンは空冷2ストローク単気筒に変更。また、無段変速機（Vベルト式）を採用することで、さらに手軽な操作性を実現していました。方向指示器戻し忘れ防止ブザーやブレーキロックレバーなども、シャリィに先駆けて装備されていました。シャリイ50 ATの登場により、1980年に生産終了となりました。

シャリィ/シャレットの系譜とホンダの軽二輪車

シャリィとシャレットは、ホンダの軽二輪車の歴史において重要な位置を占めています。スーパーカブと共通の技術を用いながら、独自の個性と魅力を放ち、長きにわたって多くの人々に愛されてきました。現在では生産終了していますが、その手軽さと使いやすさは、多くのユーザーに記憶されているでしょう。これらのモデルは、後のホンダの軽二輪車開発にも大きな影響を与えたことは間違いありません。 シャリィ/シャレットの後継モデルと言えるのは、現行で販売されているスーパーカブやグロムなど、多様なラインナップが展開されています。

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