ホンダ・スティード

ホンダ・スティード：アメリカンバイクブームを牽引した名車

ホンダが1988年から2002年にかけて製造・販売したオートバイシリーズ「スティード」は、同社初の本格的アメリカンモデルとして登場し、日本におけるアメリカンバイクブームを象徴する存在となりました。8万台を超える販売台数を記録したベストセラーモデルであり、その歴史と魅力を紐解いていきます。

開発背景と革新性

スティードは、それまでのホンダのバイク開発の方向性とは異なるアプローチで設計されました。当時全盛期だったレプリカモデルとは対照的に、あえて振動を抑える技術を省き、ハーレーダビッドソンを彷彿とさせる独特のフォルムを採用しました。この決定には、一部のバイク批評家から疑問の声も上がりましたが、結果的には、新たな市場を切り開き、爆発的な人気を獲得する要因となりました。高性能レプリカモデル全盛期において、あえて「高性能」を捨て、独自の個性を打ち出したことが功を奏したと言えるでしょう。

モデルバリエーションと特徴

スティードは、400ccと600ccの2つの排気量で展開されましたが、車体構造はほぼ共通でした。400ccモデルには、5速ミッションのNC25Eエンジンを搭載。600ccモデルには、4速ミッションのPD01Eエンジンを搭載。両エンジンとも、振動を味わえる同軸クランクを採用し、空冷エンジン風のフィンが装着されていました。マフラーは、特徴的な右側2本出しのテーパードタイプ。ハンドルはティラーバー型が標準でしたが、400ccモデルではフラットバー型も選択可能でした。燃料タンク容量は初期は9リットルでしたが、後に11リットルに拡大されました。スピードメーターはトップブリッジ上に配置され、タコメーターと燃料計は省略されました。

人気の高まりとモデルチェンジ

発売当初は不人気でしたが、1993年頃から人気に火が付き、特に400ccモデルは年間売上トップになるほどの人気モデルとなりました。この人気急上昇は、バブル経済崩壊後の時代の変化や、燃料タンク容量の拡大などのマイナーチェンジも影響したと言われています。600ccモデルは大型二輪免許が必要だったことから、特定の層に支持を集めました。1995年には、装備を簡素化し価格を抑えたVCLモデルや、スポーティなVSEモデル、スプリンガーフロントフォークを採用したVLSモデルなど、様々なバリエーションモデルが追加されました。

終焉とその後

2000年代に入ると、排ガス規制の強化に伴い、モデルチェンジが繰り返されました。最終的には、VLXモデルのみとなり、シャドウシリーズに吸収される形で生産終了となりました。スティードは、その個性的なスタイルと、時代の変化に対応したモデル展開で、多くのライダーを魅了し、日本におけるアメリカンバイクブームを牽引した名車として記憶されています。

メディアへの登場

スティードは、テレビ番組『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』でも取り上げられました。石橋貴明さんらが番組内で中型二輪免許を取得し、スティードでツーリングする様子が放送され、一般への認知度向上に貢献しました。

主要モデル一覧

VLX: スティードVCL登場に合わせて従来モデルに付けられたサブネーム。北米輸出仕様のVT600シャドウの名称と同じです。
VCL: 装備簡素化で価格を抑えたモデル。
VSE: アルミ製ディッシュホイール、大型ハンドルなど、力強さを強調したモデル。
VLS: スプリンガーフロントフォーク、21インチの大径フロントタイヤを採用した、カスタム色の強いモデル。

スティードは、その独特の存在感と、時代を反映した進化によって、多くのバイクファンに愛され続けたモデルと言えるでしょう。

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