ホンダ・モトコンポ

モトコンポ：シティと共に走り出した、革新的な折りたたみバイク

1981年、本田技研工業はコンパクトカー「シティ」と共に、画期的な原動機付自転車「モトコンポ」を発表しました。その名の通り、「モーターバイク」と、当時流行していたコンポ（オーディオ機器）を組み合わせたネーミングは、持ち運び可能なバイクというコンセプトを端的に表しています。

コンパクトさと携帯性の追求

モトコンポの開発コンセプトは、シティのトランクルームに収納できること。全長1185mm、乾燥重量42kgというコンパクトな車体に、折りたたみ機構を備えることで、容易にシティのトランクに収納できる設計となっています。ハンドル、シート、ステップは折りたたみ式で、箱型のボディに収納可能。車載時の安全性を考慮し、ボディ上部には横倒し時の注意書きステッカーが貼付されていました。

搭載されているのは、2.5PS/5,000rpmの2ストロークエンジン。加速性能は同時期発売のロードパルと同等で、最高速度は45km/h程度でした。走行中の振動や揺れに耐えうるよう、車載を前提とした設計は開発陣にとって大きな課題だったようです。しかし、その難題を克服したモトコンポは、クリスマスシーズン直前に発売され、6面にモトコンポの絵が描かれたユニークなダンボール箱に梱包されて販売されました。

販売とその後の人気

しかし、発売当初は販売が低迷。シティの「おまけ」と捉えられたことや、TVCMでのイメージ戦略などが影響したと考えられています。そのため、在庫処分として廉価で販売された車両もあったほどです。5万台以上の生産が行われましたが、1985年には生産を終了しました。

しかし、生産終了後、モトコンポは独特の個性から漫画やアニメ作品に登場するなど、再評価の波が押し寄せます。特に漫画『逮捕しちゃうぞ』での登場は、強い印象を与え、人気に拍車をかけました。現在では、ネットオークションなどで当時の販売価格を上回る価格で取引されることも珍しくありません。

モトコンポを語る上で欠かせない改造文化

モトコンポの非力なエンジンに不満を持つユーザーも多く、エンジン換装などの改造が盛んに行われています。ロードパルSの2段変速機への交換や、ホンダDioシリーズ、ヤマハJOGシリーズといったスクーターエンジンの搭載、さらにはホンダフリーウェイの250ccエンジンを搭載した例も報告されています。これらの改造は、モトコンポの高い改造性と、そのユニークなデザインへの愛着から生まれたと言えるでしょう。雑誌『月刊オートバイ』には、Dioエンジンを搭載しチューニングを施したモトコンポがサーキットで90km/h程度の最高速度を記録した記事が掲載されたほどです。

類似コンセプトの製品

モトコンポの先駆けとして、1952年にフランスで開発された「バルモビル」が挙げられます。しかし、バルモビルはハンドルやフロントタイヤなどをトランクケース型ボディから取り外して組み立てる必要があったのに対し、モトコンポは最初から部分的に露出した状態で、素早く使用できる設計になっており、実用性において大きな進歩を見せています。また、本田技研工業からは、2001年に同様のコンセプトを持つ折りたたみ式電動アシスト自転車「ステップコンポ」が発売されています。ステップワゴンのトランクに専用収納ボックスを設置し、他の荷物と同時に積載できる点が特徴です。

まとめ

モトコンポは、そのコンパクトさ、携帯性、そしてユニークなデザインによって、多くの人の心を掴んだ一台です。生産終了から時が経った今でも、高い人気を誇り、改造文化も根強く残っている点は、モトコンポが単なる乗り物ではなく、一つの文化として存在していることを示していると言えるでしょう。シティと共に生まれた革新的なバイクは、現代においても独自の輝きを放ち続けています。

もう一度検索