ホンダ・モトラ

本田技研工業 モトラ(MOTRA)徹底解説

1982年、本田技研工業から発売されたモトラ(MOTRA)は、その独特の機能性とデザインで今も多くのファンを魅了する原動機付自転車です。一般的なミニバイクとは一線を画す、モトラの魅力に迫ります。

野性的なデザインと実用性の融合

モトラは、積載能力を重視した設計が最大の特徴です。その外観は、ミリタリー調のポポグリーンとメイズイエローの2色展開で、無骨でワイルドな印象を与えます。大型のフロント・リアキャリアは、多くの荷物を搭載可能。さらに長尺物固定用のラッシングベルトガイドも装備されており、実用性は非常に高いです。フレームは、ダブルクレードルに近い形状の鋼管フレームに、エンジンガードやマウントを兼ねたパネルを溶接するなど、複雑で堅牢な構造となっています。この頑丈な車体と大型キャリアにより、車両重量は81kgと、同時代のミニバイクと比べるとやや重めですが、積載能力を考えると妥当な数値と言えるでしょう。

高い登坂能力とパワフルなエンジン

搭載されているエンジンは、スーパーカブ系をベースとした空冷4ストローク単気筒49ccエンジン。しかし、モトラ専用設計のシリンダーヘッドや大径マニホールドにより、最高出力4.5psを達成しています。これは同時代のスーパーカブ系エンジン搭載車の中でも高い数値です。また、3速ロータリー式マニュアルトランスミッションに加え、高低2速の副変速機を搭載。実質6速となり、最大で約23度の登坂能力を発揮します。これは当時の原動機付自転車の中でもトップクラスの性能です。キャブレターはケーヒン製のPB59を採用。安定した燃料供給とパワー特性を実現しています。

走破性とハンドリング

タイヤは前後ともにブリヂストン・レクタングルRE2の10インチワイドブロックタイヤを採用。太いタイヤは、悪路での接地圧分散に貢献し、砂利道やぬかるみでも走破性を発揮します。しかし、その反面、舗装路でのカーブでは独特の操作性を要求します。オフロード走行も可能ですが、荒れた路面での走破性は万能ではなく、轍や石にハンドルを取られやすい特性も持ち合わせています。モトラの設計コンセプトは積載能力と積載状態での走行性能にあり、あくまでオンロードでの走行を前提に設計されています。

充実の装備と電装系

サスペンションは、積載量に応じてプリロード調整可能なレベライザー付き。安定した走行と駐車をサポートするロック機構付きセンタースタンドも装備されています。電装系は6V仕様。発電機はライティングコイルとチャージコイルの2系統を備え、バッテリー、ライト、ウィンカー、ホーンなどに電力を供給します。発売当時、12V化が進む過渡期にあったことから、現存する車両では、レギュレーターやバッテリーを交換することで12V化し、現代の部品を流用しているユーザーもいます。

希少なパーツと高値取引

モトラ専用のオプションパーツは、現在では入手困難で高価な取引となっています。スポーツシールドやフロントバスケットなど、魅力的なアイテムが多数存在しましたが、生産終了から年数が経過しているため、中古市場でもプレミア価格で取引されることがほとんどです。スーパーカブ等と部品の互換性もあるものの、モトラ特有の外観や機能を維持するには専用パーツが必要となり、その入手性の低さが、希少価値を高める一因となっています。アフターマーケットパーツもほとんど存在せず、わずかにリプロダクト品が見られる程度です。

まとめ：伝説のレジャーバイク

モトラは、発売当時は商業的な成功を収めませんでしたが、その独特の機能性とデザイン、そして希少性から、現在ではコレクターズアイテムとして高い人気を誇っています。積載能力と登坂能力を両立した、他に類を見ない原動機付自転車として、モトラは日本のバイク史に独特の足跡を残しています。その高い実用性と個性的なデザインは、現代においても魅力的な存在であり続けています。

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