ホンダ・ロードフォックス

ホンダ ロードフォックス：3輪スクーターの先駆け

1984年7月、ホンダは革新的な3輪スクーター「ロードフォックス」を発表しました。前1輪、後2輪という独特の車体構造は、2輪車の軽快さと4輪車の安定性を融合させた画期的な試みでした。その斬新なデザインと機能性から、発売当時大きな話題を呼びました。

ロードフォックスは、従来のスクーターとは一線を画す、快適性を追求した設計が魅力です。4輪車のような安定感と、2輪車のような軽快な走りを両立。通勤や通学だけでなく、レジャーにも活用できる一台として注目を集めました。

ロードフォックスの技術的な特徴

ロードフォックスの開発においては、既存のスクーターモデルの技術をベースにしながらも、数々の改良が加えられました。エンジンは、最高出力4.0psの空冷2ストローク単気筒エンジンを搭載。コンパクトながらパワフルな走りを実現しています。また、車体には、安定性を高めるためにパラレルフレームを採用。さらに、バケットタイプのシートやワイドタイヤなど、快適な乗り心地を追求した装備が満載でした。

ロードフォックスの多くのコンポーネントは、1983年発売のホンダ・ジャストと共通化されており、製造コストの削減にも貢献しました。しかし、エンジンは独自のチューニングが施され、最高出力と最大トルクはわずかに向上しています。このエンジン改良は、ロードフォックスの個性と魅力を高める重要な要素となりました。

海外向け輸出仕様：GYRO S

ロードフォックスは、海外市場向けに「GYRO S」として輸出もされました。GYRO Sはロードフォックスをベースに、いくつかの改良が施されています。フレームサイズが拡大され、シートも大型化。また、前輪ホイール径はロードフォックスの8インチから10インチにアップグレードされています。さらに、安全性を考慮し、後部ストップランプとターンランプは独立型に、速度計にはマイル表示が追加されました。これらの変更は、海外市場のニーズと安全基準を満たすために行われました。

カスタマイズと登録

ロードフォックスは、そのユニークな構造と高いカスタマイズ性から、多くのユーザーに愛されています。後輪トレッドを広げることでミニカー登録を行い、あるいは排気量を上げることで側車付軽二輪(トライク)として登録することも可能です。これらのカスタマイズを行うことで、ヘルメット着用義務が免除される一方で、運転には普通自動車免許が必要となります。

ロードフォックスの販売と生産終了

ロードフォックスは、1984年7月20日に発売され、年間販売目標18,000台、標準販売価格139,000円とされました。しかし、1985年には生産終了となりました。販売期間は短かったものの、その斬新なデザインと高い機能性から、現在でも根強いファンが多く存在します。ロードフォックスは、ホンダのチャレンジ精神と技術力の高さを示すモデルとして、オートバイ史にその名を刻んでいます。

まとめ

ロードフォックスは、ホンダが提案した新たな3輪スクーターとして、その独創的なデザインと高い機能性が評価されました。短命に終わったモデルではありますが、その後の3輪スクーター開発に大きな影響を与えたことは間違いありません。また、カスタマイズの自由度も高く、現在でも多くのファンから愛されているモデルとなっています。ロードフォックスは、ホンダの挑戦と技術革新の歴史を象徴する一台と言えるでしょう。

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