ホンダ・CB750K

ホンダCB750Kシリーズ：750ccクラスの系譜と進化

ホンダが1978年から1984年にかけて製造・販売したCB750Kは、同社のCBシリーズに属する750ccクラスのオートバイです。本記事では、姉妹車である750 CUSTOM EXCLUSIVEとCB750 CUSTOMについても併せて解説します。

開発の背景：欧州市場攻略とレースからのフィードバック

CB750Kの開発は、先行モデルであるドリームCB750FOURの後継として、1970年代後半の市場変化に対応するために行われました。当時、ホンダは北米と欧州市場でCB750FOURを販売していましたが、DOHCや4バルブエンジンを搭載したライバル車の台頭により、競争力を維持することが困難になっていました。特に欧州市場では、北米向けモデルの単純なローカライズではシェア拡大が難しい状況でした。

この課題を解決するため、ホンダは「ノルマンディー上陸作戦」と称するプロジェクトを立ち上げました。その中核を担ったのが、ロードレースへの復帰です。ホンダはカワサキZ1に対抗すべく、1975年にH.E.R.T.（Honda Endurance Racing Team）を結成し、FIMヨーロッパ耐久選手権に参戦。レースで得られた技術をフィードバックすることで、高性能な新型モデルの開発を目指しました。

レース用マシンRCB1000で得られた技術を基に、1978年にはヨーロッパ市場向けにCB900Fが開発されました。一方、日本国内の自主規制（排気量上限750cc）や北米市場での需要を考慮し、CB900Fをベースに、CB750Fと本モデルとなるネイキッドタイプのCB750Kが開発されました。

CB750K：伝統と進化の融合

CB750K（型式名RC01）は、1978年12月に発売されました。ドリームCB750FOURのデザインを踏襲しながら、最新の技術が導入されています。

エンジン: 空冷4ストロークDOHC4バルブ4気筒エンジン（RC01E型）。排気量748cc、最高出力65ps/9,000rpm、最大トルク5.9kg-m/7,000rpm。セルスターターのみの採用により始動性が向上。
足回り: ダブルクレードル式フレーム、テレスコピックフロントフォーク、スイングアーム式リアサスペンション。FVQダンパーを採用し、減衰力を可変制御。
* ブレーキ: 油圧式シングルディスクブレーキ（フロント）、ロッド式リーディングトレーリングブレーキ（リア）。1980年のマイナーチェンジでフロントブレーキはダブルディスク化されました。

1980年にはマイナーチェンジが行われ、フロントブレーキがダブルディスク化され、ボディデザインも変更されました。

750 CUSTOM EXCLUSIVE：アメリカンスタイルの限定モデル

1980年6月には、アメリカンスタイルの派生モデルである750 CUSTOM EXCLUSIVE（型式名RC04）が1200台限定で発売されました。プルバックハンドル、ローダウンシート、ツートーンカラーリング、コムスターホイールなどが特徴です。ブレーキシステムも前後ディスクブレーキに変更されました。翌年には、CB750 CUSTOMに準じた仕様変更が行われたCB750CDBが限定販売されました。

CB750 CUSTOM：アメリカンスタイルの量産モデル

750 CUSTOM EXCLUSIVEの通常販売モデルとして、1981年5月にCB750 CUSTOMが発売されました。750 CUSTOM EXCLUSIVEをベースに、燃費向上のためのエンジンチューニング、セミエア式フロントサスペンション、デュアルピストンキャリパーなど、改良が施されました。最高出力は68ps/9,000rpmに向上しています。

市場での評価と生産終了

CB750Kは「ザ・グレート・クルーザー」として発売されましたが、CB750Fの大ヒットにより、フラグシップモデルとしての地位はCB750Fに譲ることになりました。その後、ホンダのフラグシップモデルはV型4気筒エンジンのVFシリーズに移行し、CB750Kは1984年に生産終了しました。CB750Fと共に、日本国内での並列4気筒搭載モデルはCBX750シリーズへと引き継がれていきました。

CB750Kシリーズは、ホンダの技術力とデザイン性を凝縮したモデル群として、オートバイの歴史に大きな足跡を残しました。それぞれのモデルの特徴を理解することで、当時のバイクシーンの状況や技術革新をより深く知ることができるでしょう。

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