ホンダ・CBR900RR

CBR900RRシリーズ：ホンダが生み出したスーパースポーツの金字塔

ホンダが主に輸出市場向けに製造したCBR900RRは、4ストロークエンジンのスーパースポーツバイクとして、オートバイの歴史に大きな足跡を残しました。北米仕様を除く輸出モデルには「FireBlade」という愛称が付けられ、その高い性能とスタイリッシュなデザインから世界中で人気を博しました。

開発秘話：軽量化とハンドリングへのこだわり

1980年代後半から1990年代初頭、900ccクラスのバイクはスポーツツアラーが主流でした。しかし、ホンダは従来のモデルとは一線を画す、軽量で優れたハンドリングを備えたスポーツバイクを目指しました。CBR750RRの開発計画は頓挫したものの、その設計思想を受け継ぎ、排気量を900ccに拡大。徹底的な軽量化と、250cc～400ccクラスのレプリカモデルを凌駕する軽快なハンドリングを実現しました。

開発陣は鈴鹿8耐で活躍するRVF750に勝てるポテンシャルと、ライダーとの一体感を重視。そのコンセプトは「TOTAL CONTROL」として、後のCBR1000RRシリーズにも受け継がれています。

圧倒的な性能と人気：スーパースポーツの定義を塗り替える

CBR900RRは、同時代の他社モデルと比較して軽量な車体を持ち、優れたハンドリングとブレーキ性能を誇りました。その軽快な走りは、まるで2ストロークエンジンのNSR250Rの900cc版のようだと評されました。

この圧倒的な性能は、世界中のライダーから大歓迎され、瞬く間にベストセラーに。レーサーレプリカとも異なる新たなジャンル「スーパースポーツ（SS）」の代表格として認知されるようになりました。

日本国内では長らく逆輸入車として扱われていましたが、2001年に発売された6代目CBR954RRから国内販売が開始されました。国内仕様は、馬力規制や騒音規制に対応するため、輸出仕様とは異なる改良が加えられています。

2004年には、後継機種であるCBR1000RRにバトンタッチし、生産終了となりました。

各モデルの特徴：進化を遂げるFireBlade

CBR900RRシリーズは、いくつかのモデルチェンジを経て進化を遂げました。ここでは主なモデルの特徴を簡単に見ていきましょう。

CBR900RR（SC28）：初代モデル

893ccエンジンを搭載。ロングストローク設計による力強い低中回転域の加速が特徴。
独立2灯式ヘッドライト、前後異径ホイールなど、特徴的なデザインを採用。
クラス最軽量・最コンパクトを達成。

CBR900RR（SC28・2型）：マイナーチェンジモデル

ヘッドライトをタイガーアイ型に変更。
サスペンションやカウルの改良により、さらなる走行性能の向上を実現。

CBR900RR（SC33・3型）：排気量アップと改良

排気量が919ccに拡大し、出力向上。
フレームの改良により、ハンドリング性能が向上。
メーター類が液晶モニターに変更。

CBR900RR（SC33・4型）：キャブレター仕様の最終モデル

エンジンの大幅な改良により、出力向上と軽量化を実現。
ブレーキ性能の大幅な向上。
軽量化を徹底的に追求。

CBR929RR（SC44）：フルモデルチェンジ

電子制御式燃料噴射（PGM-Fi）の採用。
フロントホイールを17インチに変更。
倒立式フロントフォーク、セミ・ピボットレスフレームを採用。
軽量化をさらに推し進め、初代モデルから約15kgの軽量化を実現。

CBR954RR（SC50）：最終モデル

シリーズ最終モデル。ミドルクラスのCB400SFとほぼ同じ軽量化を実現。
国内仕様が初めて設定。馬力規制や騒音規制に対応。
シャープなカウルデザイン、チタン製フルエキゾーストシステムなどを採用。

エピソード：ヨーロッパ市場への挑戦

SC28モデルの開発当時、日本のメーカーは「エンジンパワー至上主義」でした。しかし、開発陣は数字だけでは測れない走りの楽しさを追求し、ヨーロッパ市場の開拓に成功しました。「FireBlade」という愛称は、ヨーロッパ市場での販売戦略の一環として名付けられました。

まとめ

CBR900RRシリーズは、ホンダの技術力の結晶であり、スーパースポーツバイクの歴史に大きな影響を与えたモデルです。軽量化と優れたハンドリングへのこだわり、そして「TOTAL CONTROL」というコンセプトは、後継モデルであるCBR1000RRシリーズにも受け継がれ、現在も高い評価を得ています。

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