ホンダ・MB

ホンダMBシリーズ：エントリーモデルの雄姿と進化

ホンダがかつて製造販売していたオートバイシリーズ「MB」は、主に若年層やバイク運転免許を取得したばかりの初心者をターゲットに開発されたエントリーモデルとして知られています。既存のCB50と併売される形で登場したMBは、原付一種クラスにおいてはフルサイズのロードスポーツモデルという位置づけでした。

MB50：革新的な技術と課題

1979年4月、シリーズ最初のモデルとなるMB50が発売されました。型式名AC01のMB50は、ホンダとして初めて空冷2ストロークピストンリードバルブ単気筒エンジンを搭載した量産ロードスポーツモデルであり、AC01E型エンジンには当時のホンダの技術が惜しみなく投入されていました。

スペックは、内径×行程39.0×41.4mm、圧縮比7.9で、最高出力7.0ps/9,000rpm、最大トルク0.56kg-m/8,000rpmを達成。フィン形状の冷却システムや一軸バランサーの搭載など、エンジン性能の向上に多くの工夫が凝らされていました。

シャシー面では、マス集中化を図るためX型バックボーンフレームを採用。9Lの燃料タンクはシート下まで伸びる形状で、スタイリッシュさを演出していました。ホイールには軽量な3本スポークのコムスターホイールを採用し、セパレートハンドル風のトップブリッジ一体型ハンドルも特徴的です。さらに、ビキニカウルやサイドボックス、リアキャリアといったオプションパーツも用意されました。

MB50の登場は、スズキRG50E、カワサキAR50、ヤマハRZ50といったライバル車種による最高出力7.2ps、最高速度90km/hに迫る競争を巻き起こすきっかけとなりました。しかし、MB50にはいくつかの課題も存在しました。エンジン下部に配置されたステップは、前傾姿勢を強いる原因となり、エンジンフィールも2ストロークらしからぬもっさりとしたものでした。また、サスペンションは調整機構がなく、バッテリー容量も不足気味。さらに、当時普及しつつあったエンジンオイル残量警告灯も未装備でした。

MBシリーズの拡充と進化

MB50の成功を受けて、ホンダはシリーズの拡充を図ります。1980年2月には、排気量を79ccに拡大したMB-8（型式名HC01）を追加。最高出力9.5ps/8,000rpm、最大トルク0.89kg-m/7,500rpmに向上し、リヤサスペンションにイニシャル調整機構を追加、タンデムステップとダブルシートも装備することで2名乗車が可能となりました。

同年5月には、アップハンドルを採用し、フロントウインカーの位置を変更したMB5が発売。MB50と同じAC01型エンジンを搭載しながらも、より扱いやすいポジションを提供しました。

後継モデルへのバトンタッチ

1982年3月、MBシリーズは水冷2ストロークエンジンを搭載したMBXシリーズへとバトンタッチし、生産を終了しました。短い期間でしたが、MBシリーズはホンダのエントリーモデルとして、多くのライダーに愛され、日本のバイクシーンに大きな影響を与えたモデルと言えるでしょう。

姉妹車種とMBの存在感

MBシリーズは、MT50やラクーンといった姉妹車種とコンポーネンツを共有していました。また、漫画『金メダル暴走族』では、主人公の愛車としてMB5が登場するなど、ポップカルチャーにおいても一定の存在感を示していました。MBシリーズは、その後のホンダのバイク開発に繋がる重要なモデルであり、日本のオートバイ史にその名を刻んでいます。

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