ホンダ・NS

ホンダNSシリーズ：2ストロークエンジンの咆哮と、時代の波にのまれた栄光

ホンダNSシリーズは、本田技研工業が1980年代半ばから1999年まで製造・販売していたオートバイのシリーズ名です。水冷2ストロークエンジンを搭載したロードスポーツモデルとして、50cc、125cc、250cc、400ccクラスと幅広いラインナップを展開し、多くのライダーを魅了しました。しかし、時代の流れと共に厳しくなる自動車排出ガス規制の影響を受け、1999年にNS-1の生産終了をもって、その歴史に幕を閉じました。

2ストロークエンジンの魅力と、各モデルの特徴

NSシリーズの最大の特徴は、高回転型で軽快な走りを実現する水冷2ストロークエンジンです。軽快なハンドリングとパワフルな加速は、多くのライダーを虜にしました。全てのモデルに6速マニュアルトランスミッションが搭載され、スポーティな走りを追求した設計となっています。サスペンションは、フロントがテレスコピック式、リアがプロリンク式スイングアームを採用。フレームは、50ccモデルがセミダブルクレードル型、それ以外のモデルはダブルクレードル型を採用しています。

NS50シリーズ：原付クラスのスポーティモデル

50ccクラスのNS50F/RとNS-1は、原動機付自転車として分類されるモデルです。特にNS-1は、そのコンパクトさと取り回しの良さ、そしてスポーティなデザインから人気を博しました。

NS125R：ヨーロッパで磨かれた血統

NS125Rは、ホンダ・イタリア・インダストリアーレが製造したモデルで、ヨーロッパ市場をターゲットに開発されました。日本国内でも限定販売されましたが、その高い性能とイタリアメーカー製の部品を採用した高い品質から、コレクターズアイテムとしても高い人気を誇ります。

NS250R/F：レーサーレプリカの系譜

NS250R/Fは、250ccクラスのモデルで、フルカウルを装備したレーサーレプリカタイプのNS250Rと、ネイキッドタイプのNS250Fが設定されました。レースで培われた技術が惜しみなく投入され、高性能エンジンと軽量な車体により、卓越した走行性能を実現しました。特にNS250Rは、世界選手権で活躍したマシンを彷彿とさせるデザインと性能で、多くのライダーを魅了しました。NS250RとNS250Fは、基本設計を共有しながらも、フレーム素材やホイール、キャブレターなど、いくつかの違いがありました。

NS400R：V型3気筒エンジンの異端児

NS400Rは、400ccクラスのモデルで、V型3気筒エンジンを搭載したモデルです。前バンクに2気筒、後バンクに1気筒という独特のレイアウトは、NS500という500ccクラスのレーシングマシンの技術がフィードバックされています。そのパワフルなエンジンと、NS250Rを踏襲したシャープなハンドリングは、多くのライダーを惹きつけました。しかし、発売当初は自主規制値を大幅に超える出力であったため、マフラーのリコールが行われたというエピソードも残っています。

時代の終焉と、レガシー

NSシリーズは、その優れた性能とスタイリッシュなデザインから多くのファンを獲得しましたが、1990年代後半には厳しさを増す排ガス規制に対応することが難しくなりました。結果、1999年にNS-1の生産終了をもって、NSシリーズの歴史に幕を閉じました。しかし、その軽快な走り、そしてレーサーレプリカモデルの高い完成度は、多くのライダーの記憶に深く刻まれています。現在では、当時のモデルは中古市場で高値で取引されるなど、その人気は衰えることを知りません。2ストロークエンジンの独特のサウンドと走りは、オートバイの歴史における重要な1ページを飾っています。そして、NSシリーズは、ホンダの技術力と挑戦の歴史を象徴する存在として、これからも語り継がれていくでしょう。

もう一度検索