ホンダ・SL

ホンダSLシリーズ：デュアルパーパスモデルの系譜

ホンダのオートバイシリーズの中でも、独特の存在感を放つのが「SL」シリーズです。1960年代後半から生産され、オンロードとオフロードの両方に対応できるデュアルパーパスモデルとして人気を博しました。その歴史と特徴、そして主要モデルについて詳しく見ていきましょう。

誕生の背景：進化するオフロード需要

ホンダは、1962年のドリームCL72スクランブラー以来、オンロードモデルをベースにしたスクランブラーモデルであるCLシリーズを展開していました。しかし、競合他社がオフロード性能を強化したモデルを投入する中、CLシリーズは性能面で劣るようになってきました。この状況を打破するため、ホンダは「モトスポーツタイプ」をコンセプトに、新たなデュアルパーパスモデルの開発に着手します。その結果生まれたのが、1969年7月に販売開始されたベンリイSL90を祖とするSLシリーズです。

SLシリーズの特徴：多様なモデルと共通の設計思想

SLシリーズは、様々な排気量のモデルがラインナップされましたが、共通する特徴を持っていました。

エンジン: 空冷4ストロークSOHC、2気筒または単気筒エンジンを搭載。信頼性と耐久性に優れたエンジンが、SLシリーズの大きな魅力でした。
車体: ブリッジ付きアップタイプハンドル、鋼管ダブルクレードルフレームを採用。これにより、高い操縦安定性と耐久性を両立しました。
保護機能: エンジンやフレームを保護するためのスキッドプレートなどのガード類を装備。オフロード走行におけるダメージを軽減する設計が施されていました。
サスペンション: 前輪にはテレスコピック、後輪にはスイングアームのサスペンションを採用。路面からの衝撃を効果的に吸収し、快適な走行を実現しました。
タイヤ: 前後大径ホイールにブロックパターンタイヤを装着。オンロード、オフロードを問わず高い走行性能を発揮しました。
フェンダー: アップタイプ（固定式）のフロントフェンダーは、泥はねからライダーを保護する役割を果たしました。

これらの特徴により、SLシリーズは、街乗りから軽オフロード走行まで幅広く対応できる高い汎用性を備えていました。また、日本国内だけでなく、海外市場にも輸出され、世界中で高い評価を得ました。

モデルの変遷と終焉、そして復活

SLシリーズは、125ccや250ccモデルが2ストロークエンジンのエルシノアシリーズに移行し、1975年にはXLシリーズに、90ccモデルは1976年に排気量を下げ、XEシリーズへと進化していきました。これにより、SLシリーズは一旦生産を終了しました。

しかし、1997年、SLシリーズは復活を遂げます。オフロード性能よりも街乗りからトレッキングまで幅広く使える扱いやすさを重視したSL230が発売されたのです。このモデルは、これまでのSLシリーズとは異なるコンセプトで開発され、新たなユーザー層を獲得しました。SL230は2005年まで生産され、SLシリーズの歴史に新たな一章を刻みました。

ホンダの歴史を彩る名車

ホンダSLシリーズは、時代に合わせて進化を遂げながらも、その基本コンセプトである「扱いやすさと高い汎用性」を貫き通しました。数多くのモデルを生み出し、世界中のライダーに愛されたSLシリーズは、ホンダの歴史において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。その存在感は、現在でも多くのファンを魅了し続けています。

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