ホンダ・VRXロードスター

ホンダ VRXロードスター：伝統と革新が融合したロードスポーツ

ホンダが1995年から1999年まで製造販売していたVRXロードスターは、ネイキッドタイプのオートバイとして、独特の存在感を放っていました。Vツインエンジンを搭載したそのスタイルは、クラシカルなネイキッドバイクと、アメリカンバイクであるクルーザーバイク双方の要素を併せ持ち、独特の個性を主張していました。

デザインとコンセプト

発表当時、販促ビデオでは「ロードスポーツ・ルネッサンス」というキャッチコピーが用いられ、モーターサイクル本来の魅力である「心地よい走行性」、「楽しい操作性」、「美しいデザイン」という三点を追求したモデルとして位置づけられていました。開発コンセプトは、ライダーに長く愛される定番モデルの創造であり、その思想は、VRXロードスターのデザインや性能に反映されています。年間販売計画台数は8,000台でしたが、総販売台数は公表されていません。


パワートレインと走行性能

VRXロードスターの心臓部は、スティードシリーズの水冷3バルブ52度Vツインエンジンをベースに、さらに改良を加えたエンジンです。スティード400の30馬力から33馬力へとパワーアップを果たしており、クランクウェブバランスの変更により、より力強い鼓動感を実現しています。また、高回転域での振動を抑制する設計が施されており、高速走行時の快適性も確保しています。

さらに、吸排気システムの見直しやテーパー形状の右側二本出しマフラーの採用により、高回転域での伸びも向上しています。マフラー内部は連結されており、排気効率の向上にも貢献しています。


スタイリングと装備

スタイリング面では、クルーザーモデルを思わせるインチバータイプのハンドルを採用。マフラーやエキゾーストパイプ、砲弾型メーターケース、アルミリムなど、多くの箇所にクロームメッキやバフがけが施されており、高級感を演出しています。

シート下には5Lのユーティリティーボックスを装備。実用性も考慮された設計です。ただし、センタースタンドは省略され、サイドスタンドのみとなっています。カラーバリエーションは「ブラック」、「パールグレートブルー」、「キャンディトランスパレントレッド」の3色が用意されていました。


スペシャルブラックモデル

1996年には、タンクエンブレムを金色に変更し、エアクリーナーケースやフロントフォークなどを除くほぼ全てのパーツを黒で統一した「スペシャルブラック」が発売されました。このモデルは、より精悍で落ち着いた印象を与えています。


生産終了とその後

1999年に生産を終了したVRXロードスターですが、その独特のデザインと走行性能は多くのライダーに支持されました。現在では生産終了となっているものの、中古市場においては根強い人気を誇り、今もなお多くのファンを魅了しています。その魅力は、単なる乗り物ではなく、所有する喜び、そして長く付き合うパートナーとしての存在感を持ち合わせていたからと言えるでしょう。


関連モデル

VRXロードスターは、ホンダの他のクルーザーモデル、スティードやシャドウシリーズと比較検討されることも多く、それぞれのモデルが持つ個性的な魅力が、ライダーの選択をより多様で豊かなものにしていました。


まとめ

ホンダVRXロードスターは、クラシカルなデザインと現代的な技術が見事に融合した、個性豊かなオートバイでした。その存在感は、生産終了後もなお、多くのライダーの記憶に鮮やかに刻まれていると言えるでしょう。 その独特のスタイルと、力強い鼓動感、そして快適な走行性能は、多くのライダーに忘れられない感動を与え続けたに違いありません。

もう一度検索