ホーソン効果

ホーソン効果

ホーソン効果とは、治療を受ける人が、信頼する治療者（医師など）から期待されていると感じることによって、行動の変化を起こし、結果的に病状が改善する現象を指します。これは、症状が良くなったように感じたり、良くなったと治療者に報告したりすることを含みます。

ホーソン効果は、プラセボ効果の一部として統計的に扱われることがあります。この名称は、アメリカのホーソン工場で実施された、労働者の作業効率を向上させるための調査から発見されたことに由来します。

ホーソン実験の概要

ホーソン効果は、米国のホーソン工場で、労働者の作業効率向上を目的とした一連の調査（ホーソン実験）から発見されました。当初の目的は、工場の物理的環境、例えば照明の明るさなどを改善することが、作業効率にどのような影響を与えるかを調査することでした。

しかし、実験の結果は予想外のものでした。照明の明るさを変えるだけでなく、休憩時間を設けたり、作業条件を変えたりする様々な試みが行われましたが、どのような変更を加えても、作業効率は一貫して向上する傾向が見られたのです。

発見されたこと

最終的に、研究者たちは、作業効率の向上は、物理的な要因よりも、労働者たちが「自分たちは注目されている」「自分たちのことが気にかけてもらえている」と感じることによる心理的な要因が大きいという結論に至りました。つまり、周囲や上司が関心を高めることが、物理的要因以上に効果があることが判明したのです。

人は一般的に、関心を持ってくれる人や期待してくれる人の心に応えようとする傾向があります。この心理的な効果が、ホーソン効果の本質です。

医学統計におけるホーソン効果

医学の分野では、信頼を受けている医師などの期待に応えようとして、患者が症状を実際よりも軽く報告したり、改善があったかのように振る舞ったりすることがあります。このような行動は、意識的な場合も無意識的な場合もあります。その結果、統計上は症状が改善されたように見えることがあります。これを特に「統計上のホーソン効果」と呼びます。

医学統計において、ホーソン効果が入り込むと、薬や治療法の効果を正しく評価することができなくなります。そのため、臨床試験などでは、以下の対策を講じることが重要です。

対照群（プラセボ群）の設定: 薬を投与するグループ（実薬群）と、薬効成分を含まない偽薬（プラセボ）を投与するグループを設けます。プラセボ群にも何らかの改善が見られる場合、それはホーソン効果やプラセボ効果によるものと考えられます。
盲検化（マスキング）: 患者だけでなく、医師や研究者も、誰が実薬を投与されているか、プラセボを投与されているかを知らない状態にします。これにより、医師や研究者の先入観が結果に影響を与えることを防ぎます。

これらの対策によって、ホーソン効果の影響を最小限に抑え、薬や治療法の真の効果をより正確に評価することができます。

まとめ

ホーソン効果は、人が注目されていると感じることで行動が変化するという興味深い現象です。医学研究においては、この効果を考慮した上で、客観的な評価を行うことが重要となります。

参考文献

大橋昭一・竹林浩志「ホーソン効果の実体をめぐる諸論調」関西大学商学論51巻5号/2006.Dec.

関連項目

ホーソン実験

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