ホームタウンディシジョン

ホームタウンディシジョンとは、様々なスポーツにおいて、試合を裁く審判や採点担当者が、開催地のチームや選手に対して、意識的か無意識的かにかかわらず、有利な判定を下す傾向が見られる状況を指す言葉です。これは、金銭などの不正が介在する「八百長」とは異なり、多くの場合、選手自身は関与していません。日本では一般に「地元判定」「地元びいき」といった言葉が使われ、「ジモハン」と略されることもあります。

語源と適用範囲

この言葉は、もともとボクシングの採点のように主観的な要素が強い判定において、開催地の選手に有利な判断が下されやすい傾向があることから生まれました。現在では、サッカーや野球など様々な競技で、反則やファウル、プレイ続行の判断といった微妙な場面での判定がホームチーム側に有利に見える場合に使われます。ただし、ルール自体にホームチームを優先する規定がある競技も存在し、これらはホームタウンディシジョンとは区別されます。

発生の背景

ホームタウンディシジョンの背景には、ホームチームを応援する観客の熱狂や、それが生み出す雰囲気による影響が指摘されています。こうした環境が、微妙な判断を迫られる審判に対して、無意識のうちにホーム有利な方向に傾かせる可能性が示唆されています。また、競技によっては、興行上の理由などから、ホームチームに有利な判定がある程度容認される、といった不文律の存在を指摘する声もあります。しかし、ホームでの試合は、移動の負担軽減や慣れた環境でのプレーなど、判定以外の要因でもホーム側が有利になる要素が多いため、判定結果がホーム有利になったとしても、それがホームタウンディシジョンによるものなのか、純粋なホームアドバンテージによるものなのかを区別するのは難しい場合が多いです。

主な事例

過去には、多くのメディアで公平性が疑問視され、社会的な注目を集めたとされる事例が複数存在します。

ボクシング: 1964年の海老原博幸選手や1969年のファイティング原田選手の世界戦で、開催地側有利とされる判定が問題視されました。特に1988年のソウルオリンピック決勝におけるロイ・ジョーンズ・ジュニア選手の敗戦は、後に審判買収が明らかになる衝撃的な事例です。また、1990年代以降の日本のボクシング界でも、鬼塚勝也選手や薬師寺保栄選手、亀田興毅選手などの世界タイトル戦で、際どい判定に対する疑問の声が度々聞かれ、地元ジャッジの判定が批判の対象となるケースも見られました。
サッカー: 2002年のFIFAワールドカップ日韓大会において、韓国代表の試合での判定が複数の対戦国から疑問視され、後にFIFAの公式記録で「世紀の誤審」の一つとして認識された事例があります。
* 野球: 2006年のワールド・ベースボール・クラシック（WBC）で、アメリカ代表の試合におけるアメリカ人審判の判定に対し、ビデオ映像などから明らかな誤審として疑惑が持たれたケースがありました。

ホームタウンディシジョンは、スポーツの公平性に関わる根深い問題としてしばしば議論されます。その発生要因は複雑であり、単純な不正行為として片付けられない難しさを含んでいます。

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