ホールピペット

ホールピペット：正確な液体の分注に欠かせない実験器具

ホールピペットは、化学実験において正確な体積の液体を測り取るために用いられる精密なガラス器具です。その名の通り、一定の体積の液体のみを分注する設計になっており、0.1mLから100mL程度までの様々な容量のものが存在します。

ホールピペットの特徴

ホールピペットは、細長いガラス管の中央に膨らんだ部分（膨大部）を持ち、上部に1本の目盛り線（標線）が刻まれています。この標線まで液体を吸い上げることで、正確な体積の液体を分注することができます。容量によって大きさは異なりますが、一般的には外径2～10mm、長さ30～70cm程度のガラス管で、膨大部の外径は2～40mm、長さは1～15cm程度です。

ホールピペットとメスピペットの違い

ホールピペットと似た器具にメスピペットがありますが、両者には重要な違いがあります。メスピペットは、複数の目盛りが刻まれており、様々な体積の液体を分注できます。そのため汎用性が高い反面、ホールピペットと比べると精度は劣ります。一方、ホールピペットは標線が1本のみで、標線部の管径が細くなっているため、非常に高い精度で液体を分注できます。

そのため、高い精度が要求される実験、例えば標準溶液の調製などにはホールピペットが使用され、精度がそれほど重要でない場合や、様々な体積の液体を扱う際にはメスピペットが使用されます。メスシリンダーも同様の用途で使用されますが、精度ではホールピペットに劣ります。

ホールピペットの使い方

ホールピペットを使用する際は、まずピペットの先端を液体に浸し、標線の少し上まで液体を吸い上げます。従来は口で吸い上げる方法が一般的でしたが、試薬の誤飲リスクがあるため、現在では安全ピペッターの使用が強く推奨されています。

液体を吸い上げたら、ピペットの先端の外側をキムワイプなどで拭き、ピペットの先端を原液容器の内壁に付けて、ピペット外側の余分な液滴を落とします。その後、指でピペットの上端を軽く押さえながら、液面のメニスカスの下面を標線の上縁または標線中央に合わせます。

液面を調整したら、目的の容器の内壁にピペットの先端を付け、指を離して液体を自然落下させます。先端に残った液は、3秒間容器にあてがいますが、吹き出さずにそのまま処分します。

ただし、日本のメーカーが製造する日本向けのホールピペットの中には、ISO規格に準拠せず、旧計量器検定検査規則に基づき、残液を吹き出して呼び容量にするように製造されているものがあります。使用する際は、製品表示を確認し、残液を吹き出す必要があるかどうかを確認する必要があります。

ホールピペットの洗浄と保守

ホールピペットの洗浄は、使用した試料の種類に応じて適切な洗剤に浸漬した後、ピペット洗浄器を用いて水道水で繰り返しすすぎ、最後に精製水ですすいで乾燥させます。

万一、ピペットに欠けなどが発生した場合は、欠けた部分を折り捨て、バーナーで丸めて補修しますが、バーナーの熱が計量部分にかからないよう注意が必要です。標線より下の計量部分が破損した場合は、補修せずに廃棄処分します。

温度変化の影響

正確な液体の計量においては、温度変化による体積変化が大きな誤差要因となることを忘れてはいけません。特に有機溶媒は温度変化の影響を受けやすいため、室温の管理（20℃程度）も重要です。精密な実験を行う際は、温度管理された環境下で行うことが不可欠です。

まとめ

ホールピペットは、正確な液体の分注に不可欠な実験器具です。その高い精度を維持するためには、正しい使用方法、洗浄方法、そして温度管理を徹底することが重要です。

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