ボクサー (1970年の映画)

『ボクサー』（原題：The Great White Hope）は、1970年に公開されたアメリカの映画で、20世紀初頭のボクシング界に衝撃を与えた実在のボクサー、ジャック・ジョンソンを基にしています。ハワード・サックラーの舞台劇「偉大なる白人の希望」を原作とし、マーティン・リットが監督を務めました。映画化されたこの作品は、黒人として初めてヘビー級チャンピオンとなった人物の貴重な人生史と、彼が直面した数々の困難を描いています。

物語は、ジャック・ジェファーソンという黒人ボクサーの視点から展開されます。彼は、白人によるボクシング界の支配に挑む存在であり、ヒーローでもあります。彼が目指したのは、黒人として誇り高く生き、金メダルを手にすることです。彼は白人女性エレノアと恋に落ち、華やかな生活を送りながら、次第に社会の偏見に立ち向かう姿が描かれています。この恋愛関係は、当時の人種差別的な社会構造の中で大きな波紋を呼ぶことになります。

ジャックは“偉大なる白人の希望”と呼ばれる対戦相手を打ち破り、黒人チャンピオンとしての地位を手に入れます。しかし、白人社会からの反発に加えて、同じ黒人コミュニティからも非難され、彼の人生は困難に包まれます。結果として、ジャックは州治安法違反で訴えられ、エレノアと共にアメリカを離れることになります。

海外でのタイトルマッチはアメリカ政府の圧力により実現せず、次第にジャックは失意に陥ります。彼の生活は困窮し、エレノアとの関係も険悪になり、次第に彼のプライドと生き方が試される展開を迎えます。特に、謝罪として八百長試合を提案されるシーンでは、彼の誇りが揺らぐことなく拒絶する姿が印象的です。

この映画の中で、主演はジェームズ・アール・ジョーンズがジャック・ジェファーソンを演じ、彼の力強いパフォーマンスは多くの賞にノミネートされました。また、エレノア役にジェーン・アレクサンダーをキャスティングしており、彼女にとっては映画デビュー作でもあります。この作品は、第43回アカデミー賞でも主演男優賞や主演女優賞にノミネートされ、ジェームズはゴールデングローブ賞でも有望若手男優賞を受賞しました。

『ボクサー』は、ヒューマンドラマとしての側面を持ちながら、社会的なメッセージも内包した作品であり、今も多くの人々に感銘を与え続けています。映画を通じて、ボクシングの歴史だけでなく、当時のアメリカ社会の人種問題について考えさせられる内容となっています。

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