ボナンパク

ボナンパク（Bonampak）は、かつてのマヤ文明の重要な都市遺跡であり、その栄華は4世紀から8世紀頃にかけて続いたとされています。この遺跡は、メキシコの南東部にあるチアパス州の東端に位置し、グアテマラの国境に近い場所にあります。具体的には、北緯16度42分0秒、東経91度3分0秒、標高300メートルの地点にあり、シエラマドレ山脈に挟まれた20キロメートル幅の平坦な谷間に広がっています。現在は熱帯雨林気候のため、緑豊かな森林に覆われており、南西にはラカンハ川が流れています。

遺跡の全体像は北北東を向いており、約100メートル四方の広場を中心に、南側には神殿（Templo de las pinturas）が高さ数十メートルのピラミッド型の丘の上に造られています。広場の中心部には一本、広場と神殿の境界には二本の石柱が残されています。

ボナンパクの知名度が向上したのは、1946年にジャイルズ・ヒリーがラカンドン族の映画を撮影したことがきっかけでした。その後、1947年からはアメリカのカーネギー研究所とメキシコの国立人類学歴史学研究所による本格的な調査が行われ、1955年には調査成果が発表されました。この頃から、ボナンパクは観光資源としても注目されるようになり、1964年には当時の大統領グスターボ・ディアス・オルダスが周辺インフラ整備や開発を公約に掲げ、遺跡の人気が高まりました。

かつて、マヤ文明は「平和的な民族である」との見解が広く信じられていました。特に、「戦争の痕跡が無く、城塞が存在しない」ことがその理由とされていました。しかし、ボナンパク遺跡からはそれを覆す壁画が発見され、1955年の最初の調査報告書では、これらの事実が一部意図的に隠蔽されていたことも示唆されています。

ボナンパクの神殿内部は三つの部屋に分かれており、それぞれの部屋には戦争に赴く様子や、勝利を収めた際の捕虜獲得、勝利を祝う儀式の様子が彩られた壁画が描かれています。これらの壁画とともに残されたマヤ文字の解読により、マヤ文明における戦争の実態が明らかになりました。

さらに、ボナンパクの壁画はデジタル技術を用いた復元計画が進められ、DIS（デジタルインターネットサービス）などが活用されてデジタル復元プロジェクトが展開されています。これにより、より多くの人々がこの遺跡の美しさと歴史的意義に触れる機会が提供されています。

ボナンパクはその独自の文化的・歴史的な重要性から、現在も多くの学者や訪問者にとって魅力的な研究対象であり、マヤ文明の理解を深めるための貴重な場所となっています。特に壁画に描かれた戦争の様子は、文化や社会の姿を知る上で欠かせない資料となっています。

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