ボナヴェントゥラ・ジェネリ

ジョヴァンニ・ボナヴェントゥラ・ジェネリ（Giovanni Bonaventura Genelli）は、1798年 9月28日にベルリンで生まれたイタリア系ドイツ人の画家、イラストレーターです。彼は1868年 11月13日にヴァイマルで亡くなりました。

生涯

ジェネリ家は工芸家の家系で、1730年頃にローマからコペンハーゲンへ移住しました。彼の祖父はコペンハーゲンで生まれた後ウィーンで活動し、1774年にはベルリンの宮廷に招かれています。父親のヤヌス・ジェネリ（Janus Genelli、1761-1813）はベルリン美術アカデミーで風景画を学び、ロシアの宮廷などで働いた画家でした。また、叔父のハンス・クリスティアン・ジェネリ（Hans Christian Genelli）は建築家として知られています。

ボナヴェントゥラはまず父親から絵の手ほどきを受けました。1814年からはプロイセン王立芸術アカデミーに入学し、当時校長を務めていたヨハン・ゴットフリート・シャドウのもと、ヨハン・エルトマン・フンメルらから学びました。アカデミー卒業後、彼はイラストレーターとして神話を主題にした作品を描き始めるとともに、肖像画家としても活動を開始します。父親の友人であり、ベルリン王立歌劇場の総監督を務めた有力貴族カール・フォン・ブリュールは、彼の支援者の一人でした。

1822年から1832年までの約10年間、ジェネリはローマに滞在しました。この地で、彼は当時ローマで活動していたヨーゼフ・アントン・コッホやフリードリヒ・ミュラーといったドイツ語圏の芸術家たちと交流を持ち、彼らから多大な影響を受けました。ローマ滞在中、ジェネリはルネサンス期の巨匠たちの作品を深く研究し、特に壁画制作に関連する多くの素描を描き残しました。しかし、この時期に油絵を描く機会はほとんどありませんでした。

1832年、ライプツィヒの医師から邸宅の装飾画制作の依頼を受け、ジェネリはライプツィヒに移ります。しかし、設計図を描いただけで、依頼主との間に意見の相違が生じ、作業は中止に追い込まれてしまいました。

その後、1836年にミュンヘンへ移り、そこで約20年間を過ごしました。この期間、彼は大きな仕事の注文を受ける機会に恵まれず、比較的静かに創作活動を続けました。特に神話や文学作品を題材とした素描を多数制作し、これらの素描は後に版画化されて出版され、彼の芸術を知らしめる重要な手段となりました。

転機が訪れたのは1856年です。文学者で美術品収集家でもあったシャック伯爵（アドルフ・フリードリヒ・フォン・シャック、1815–1894）と知り合ったことで、彼のキャリアは新たな展開を迎えます。1859年には、シャック伯爵の尽力もあり、ザクセン＝ヴァイマル＝アイゼナハ大公からヴァイマルに招かれ、画家として経済的な支援を受けることになりました。ヴァイマル移住後は、特にシャック伯爵のために、それまで素描として構想していた作品を油絵として具現化する仕事を多く手がけるようになります。

ボナヴェントゥラ・ジェネリは、支援者のもとで制作活動を続けた後、1868年 11月13日にヴァイマルでその生涯を閉じました。

作品

ジェネリの作品は、神話や文学、特にダンテやホメロス、ヴィルギルスの作品世界に深く根ざしています。彼の作品の大部分は素描で構成されており、精緻で物語性に富んだ彼のスタイルがよく表れています。晩年にはシャック伯爵の支援により油絵も制作しましたが、彼の芸術の本質は、想像力豊かな素描による表現にありました。彼の作品は、ドイツにおけるナザレ派以降の古典主義的な伝統を受け継ぎつつ、独自の幻想的な世界観を展開しています。

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