ボブ・シーガー

ボブ・シーガー：アメリカン・ロックの魂

ボブ・シーガー（Bob Seger、1945年 5月6日 - ）は、アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト出身のロックミュージシャン、シンガーソングライターです。本名はロバート・クラーク・シーガー（Robert Clark Seger）。彼は、その力強い歌声と、アメリカの労働者階級の生活や感情をリアルに描いた歌詞で、数多くのファンを魅了してきました。全世界でのレコード・カセット・CD等の総売り上げは7,500万枚を超え、2004年にはロックの殿堂入りを果たしています。

生い立ちと音楽への目覚め

シーガーは、ミシガン州デトロイト市内の病院で、父スチュアートと母シャーロットの次男として生まれました。5歳の時にデトロイト近郊のアナーバーへ引っ越します。父親はフォード・モーター・カンパニーに勤務する傍ら、音楽活動も行っており、様々な楽器を演奏していました。その影響で、シーガーも幼少の頃から音楽に親しむようになります。しかし、家庭環境は複雑で、両親の喧嘩が絶えませんでした。シーガーが10歳の時、父親は家族を捨ててカリフォルニア州へ移り住み、残された家族は経済的に困窮。母親はハウスキーパーとして、4歳年上の兄は働きに出て家計を支えました。1963年、シーガーは地元のアナーバー高校（現在のパイオニア高校）を卒業しています。

シーガーは、リトル・リチャードやエルヴィス・プレスリーといった初期のロックンロール・アーティストに強い影響を受けました。初めて買ったレコードは、デル・バイキングスの「カム・ゴー・ウィズ・ミー」だったそうです。

地元スターから全国区へ

1961年、シーガーはアナーバー高校の仲間とデシベルズ（The Decibels）を結成し、音楽活動を本格化させます。ギター、ピアノ、キーボード、ボーカルを担当し、初のオリジナル曲「The Lonely One」を制作しました。その後、タウン・クライアーズ（The Town Criers）に加入し、リードボーカルとして「ルイ・ルイ」などのカバー曲を歌っていました。この頃、ジェームス・ブラウンのライブ盤がお気に入りで、ビートルズからも大きな影響を受けたと語っています。

ダグ・ブラウン＆ジ・オーメンズ（Doug Brown & The Omens）への参加を経て、1966年にはボブ・シーガー＆ザ・ラスト・ハードを結成。「East Side Story」がデトロイトを中心にヒットを記録しました。その後、カメオ＝パークウェイレコードと契約し、「Heavy Music」を発表しますが、レコード会社の倒産により、全米ブレイクのチャンスを逃してしまいます。

1968年、キャピトルレコードと契約し、ザ・ボブ・シーガー・システム（The Bob Seger System）として再出発。反戦歌「2 + 2 = ?」を発表し、音楽的な方向性の変化を見せます。そして、1969年、「ランブリン・ギャンブリン・マン（Ramblin' Gamblin' Man）」が初の全国ヒットとなり、アルバムもビルボードチャートで62位を記録しました。しかし、その後の作品は商業的に成功せず、シーガーは一時音楽業界から離れ、大学へ通うことになります。

ソロ活動を経て、1974年にバックバンド、シルヴァー・ブレット・バンドを結成。1976年発表のアルバム『炎の叫び（Night Moves）』が、全米8位の大ヒットを記録し、シーガーはついに商業的な成功を手にします。タイトル曲「ナイト・ムーヴス（Night Moves）」は全米シングルチャート4位を記録し、彼の代表曲の一つとなりました。

アメリカン・ロックの象徴へ

その後も、『見知らぬ街（Stranger in Town）』（1978年）、『奔馬の如く（Against the Wind）』（1980年）、『ザ・ディスタンス（The Distance）』（1982年）といったアルバムを次々と発表し、数多くのヒット曲を生み出しました。「オールド・タイム・ロック & ロール（Old Time Rock & Roll）」は、映画『卒業白書（Risky Business）』で使用され、再び注目を集めました。

1987年には、映画『ビバリーヒルズ・コップ2』のサウンドトラック曲「シェイクダウン（Shakedown）」が、自身初の全米シングルチャート1位を獲得しました。

1990年代以降も、アルバム制作やツアー活動を精力的に行い、2004年にはロックの殿堂入りを果たしました。近年も、精力的に活動を続け、アメリカン・ロックの象徴として、今もなお多くのファンを魅了し続けています。

ボブ・シーガーの音楽は、アメリカの風景や人々の感情を鮮やかに描き出し、聴く者の心に深く響きます。彼の音楽は、時代を超えて愛され続ける、アメリカン・ロックの魂そのものと言えるでしょう。

もう一度検索