ボル (セルビア)

セルビア東部に位置するボルは、この地域の中心的な町であり、ボル郡の行政機能を担っています。町の歴史と経済は、1903年にフランス企業によって操業が始まった大規模な銅鉱山と深く結びついています。この鉱山はヨーロッパでも有数の規模を誇り、長きにわたりボルを経済的に支える基盤となってきました。

ボルとその周辺地域は、豊かな自然景観に恵まれています。リラックスできるスパのあるブレストヴァチュカ・バニャや、美しいボルスコ・イェゼロ湖、ハイキングに適したストル山やツルニ・ヴルフ山など、多様な自然が人々を魅了しています。

町の歴史は古く、新石器時代のブバニィ・サルクツァ文化に属する土器や小型の彫像などが、ボル近郊のクリヴェリ村で発見されています。近代において特に重要だったのは、1903年の銅鉱山操業開始です。これにより、町は急速に発展しました。第二次世界大戦中、ハンガリーの詩人ラドノーティ・ミクローシュはボルの銅鉱山で強制労働に従事させられ、その過酷な体験の中で詩を創作しました。1947年には、当時の人口約1.1万人であったボルが公式に町の地位を獲得しました。

ボルの経済は、銅鉱業に大きく依存しています。1970年代から80年代にかけて鉱山は繁栄を謳歌しましたが、1990年代中頃には状況が一変します。当時のユーゴスラビア連邦共和国に対する経済制裁に加え、鉱石の埋蔵量減少や旧式の設備による非効率な採掘が重なり、生産量は大きく落ち込みました。これは町の経済全体に深刻な影響を与えました。この状況を打開するため、鉱山会社RTB Borの民営化が試みられます。

2007年6月には、ルーマニアの企業Cupromへの4億ドルでの売却計画が発表されました。Cupromは生産設備の近代化やマイダンペク鉱山の採掘水準改善を約束し、これは町の経済再生に向けた画期的な一歩と期待されました。しかし、Cupromは期限までに資金を準備できず、セルビア政府はこの契約を破棄しました。改めて民営化の入札が行われ、2008年2月7日には、セルビア東部で採掘・精錬事業を展開するオーストリアの合弁企業A-TECが、4億6,600万ドルでRTB Borを買収する契約を締結しました。さらにA-TECは、その後の2年間で2億3,700万ドルの追加投資を行うこと、そして4,691人の従業員の雇用を維持することを義務付けられました。

この買収当時の2008年11月におけるボル市民の月平均収入は730ドルでした。しかし、新たな買い手となったA-TECも、期日までに2回目の支払いを履行することができませんでした。これを受けて民営化担当局は再度、新たな入札手続きを開始しましたが、これも不成功に終わっています。このように、ボルを経済的に支える要である銅鉱山の民営化計画は、幾度も頓挫を繰り返しており、町の安定的な発展にとって大きな課題となっています。

ボルは複数の外国の都市と姉妹都市提携を結んでいます。モンテネグロのバール、フランスのル・クルーゾ、ウクライナのフメリニツキー、ザンビアのキトウェ、ブルガリアのヴラツァなどがこれにあたります。

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