ボーフォール (チーズ)

ボーフォール：サヴォワ地方が生んだチーズの傑作

フランスのサヴォワ地方、サヴォワ県とオート＝サヴォワ県の一部で生産されるボーフォールは、牛乳を原料とするハードタイプのチーズです。美食家ジャン・アンテルム・ブリア＝サヴァランが「チーズのプリンス」と称賛したと伝えられており、その格の高さが伺えます。

ボーフォールという名前は、その産地のひとつであるボーフォール村に由来しています。同じサヴォワ地方で作られるアボンダンスチーズと類似性がありますが、ボーフォールの方が一回り大きいサイズが特徴です。

その歴史は古く、正確な起源は不明ですが中世にまで遡ります。地元やスイスで生産されるウォッシュチーズ、ヴァシュランを作っていた人々が、17世紀にグリュイエールチーズの製法を取り入れました。この時生まれたのが「グロヴィール」と呼ばれるチーズで、現在のボーフォールとよく似たものでした。文献に初めて登場するのは1865年とされており、それ以降、製法はほぼ変わることなく受け継がれています。そして1968年には、その品質と伝統が認められ、AOC（原産地名称保護）認定を取得しました。

ボーフォールには、通常のボーフォールに加え、「エテ」と「アルパージュ」という呼称による分類があります。これらは夏の間に放牧された牛のミルクから作られる特別なボーフォールです。「エテ」は夏のミルクで作られるチーズ全般を指しますが、「アルパージュ」はさらに限定的な意味を持ちます。アルパージュは標高1500メートル以上の山小屋（シャレ）で製造されたもののみを指し、その希少性と高い品質から「最高級」「絶品」と称賛されています。AOC認定のボーフォールは生産地の標高を800メートル以上に限定していますが、「ボーフォール・ダルパージュ」と呼ばれるこの最高級品は、さらに厳しい条件をクリアした特別なチーズなのです。

ボーフォールは、独特の風味を持っています。甘みのある味わいは、青草、花、フルーツ、ナッツといった複雑なアロマが織りなすハーモニーです。その風味を最大限に楽しむには、ワインやクルミ入りのパンとの組み合わせがおすすめです。また、濃厚な味わいはチーズフォンデュにも最適です。

このように、ボーフォールは長い歴史と伝統、そして厳しい品質管理によって生み出される、フランスを代表するチーズのひとつです。特にアルパージュは、その希少性と卓越した風味から、チーズ愛好家にとって特別な存在と言えるでしょう。その豊かな風味を、ぜひご堪能ください。

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