ボーン・レガシー

ボーン・レガシー：小説と映画の軌跡

『ボーン・レガシー』は、ロバート・ラドラムの死後、エリック・ヴァン・ラストベーダーが執筆を引き継いだ、ジェイソン・ボーンシリーズの第4作目です。14年の時を経て、新たな作家によってシリーズは再開されました。ラストベーダーはその後もシリーズを執筆し続け、『ボーン・レガシー』を含め7作品を発表しています。この小説版『ボーン・レガシー』は、ボーンが再び穏やかな生活を送るも、突如襲撃を受け、再び逃亡を余儀なくされる物語を描いています。CIA時代の友人であるアレックス・コンクリンの死をきっかけに、ボーンは自身の過去と、彼を陥れようとする勢力との戦いを繰り広げることになります。小説版では、コンクリンの遺品を手がかりに、ボーンは自分を追う者たちの正体に迫ります。

一方、2012年に公開された同名映画『ボーン・レガシー』は、小説版とは全く異なる物語となっています。映画版は、マット・デイモン演じるジェイソン・ボーンは登場せず、これまでのシリーズのスピンオフ作品として、新しいキャラクターと、トレッドストーン作戦に類似した新たな極秘作戦に焦点を当てています。

映画版の制作は、幾多の困難を伴いました。当初、前作『ボーン・アルティメイタム』の脚本を手掛けたジョージ・ノルフィが、ラドラムの小説に基づいた脚本を執筆する予定でした。マット・デイモンら主要キャストも出演を予定していましたが、監督のポール・グリーングラスが降板すると、マット・デイモンも続投を拒否。シリーズの未来は不透明に見えました。しかし、その後、トニー・ギルロイが監督と脚本を引き継ぎ、新たな物語が紡がれることとなります。

この映画版『ボーン・レガシー』は、ジェイソン・ボーンを主人公としたシリーズとは異なる視点から、同じ世界観を描いています。新たなプロット、新たなキャラクター、そして新たな謎が提示され、シリーズ全体をさらに深める作品として評価されました。ギルロイ監督は、デイモンとグリーングラスのシリーズへの復帰の可能性にも言及しており、シリーズの未来に期待を持たせています。

ジェイソン・ボーンシリーズは、小説版と映画版がそれぞれ独立した進化を遂げ、シリーズの幅を広げていきました。小説版は、ラストベーダーによって、ボーンの物語の新たな側面が描かれ、シリーズ全体の奥行きが増しました。映画版は、新たな物語とキャラクターの導入により、シリーズの裾野を広げ、新たなファンを獲得しました。両作品とも、それぞれの魅力があり、スパイ小説、スパイ映画史における重要な位置を占めているといえるでしょう。

小説版シリーズ一覧（ロバート・ラドラム著）

1980年 『暗殺者』(The Bourne Identity)
1986年 『殺戮のオデッセイ』(The Bourne Supremacy)
1989年 『最後の暗殺者』(The Bourne Ultimatum)

小説版シリーズ一覧（エリック・ヴァン・ラストベーダー著）

2004年 『ボーン・レガシー』(The Bourne Legacy)
2007年 『ボーン・ビトレイヤル』(The Bourne Betrayal)
2008年 『ボーン・サンクション』(The Bourne Sanction)
2009年 『The Bourne Deception』
2010年 『The Bourne Objective』
2011年 『The Bourne Dominion』
2012年 『The Bourne Imperative』
* 2013年 『The Bourne Retribution』

これらの作品は、それぞれが独立した物語を持ちながらも、シリーズ全体を通して一貫した世界観とテーマを共有しています。小説と映画、それぞれの作品群を通して、この人気シリーズの奥深さと魅力を堪能することができるでしょう。 それぞれの作品が、独自の魅力とシリーズ全体への貢献を果たし、ジェイソン・ボーンというキャラクター、そしてこの世界観の豊かさを際立たせています。 シリーズのファンならずとも、手に取る価値のある作品群です。

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