ポット・ラック

『ポット・ラック』（Pot Luck）は、エルヴィス・プレスリーが1962年に発表したアルバムです。日本では旧邦題「わが友エルヴィス」としても知られています。このアルバムは、1961年から1962年にかけて4回のセッションで録音されました。1961年3月22日のセッションはハリウッドのラジオ・レコーダーズ・スタジオで行われ、残りの3回はナッシュビルのRCAスタジオBで行われました。

特筆すべきは、このアルバムにはカバー曲が一切収録されていない点です。エルヴィスはこれまでも歌詞の改変や追加に携わることはありましたが、このアルバムで初めて作曲に本格的に関わりました。友人のレッド・ウェストと共作した「忘れえぬ人」、さらにレッド・ウェスト、チャーリー・ホッジと3人で共作した「ユール・ビー・ゴーン」がその例です。「ユール・ビー・ゴーン」は当初、コール・ポーターの「ビギン・ザ・ビギン」のメロディーを借用する予定でしたが、ポーターの許可が得られず、最終的にチャーリー・ホッジが作曲を担当しました。

また、当時の流行であったボサノヴァの影響を受け、ラテン風のフィーリングを持つ楽曲が収録されていることもこのアルバムの特徴です。例えば、「ステッピン・アウト・オブ・ライン」は、映画「ブルー・ハワイ」で使用されたテイクとは異なる、テイク17が収録されています。

1965年の映画「いかすぜ！この恋」では、ファン投票によって選ばれた9曲の中に、このアルバムから「イージー・クエスチョン」、「僕は君のもの」、「いつまでも忘れまい」、「ナイト・ライダー」の4曲が選ばれ使用されました。

1963年、エルヴィスは『ポット・ラック』に続くアルバム制作のためにレコーディングを行いましたが、「G.I.ブルース」や「ブルー・ハワイ」などのサウンドトラックが立て続けに大ヒットしたため、サウンドトラックのレコーディングが中心になっていきました。結果として、このアルバムに続く新作のノンサウンドトラック・アルバムは、1967年の「ゴールデン・ヒム」まで発売されませんでした。この間に録音された楽曲は、サウンドトラックのボーナス・トラックやシングルとしてリリースされました。

1999年に再発された際には、アップグレード・バージョンとして5曲のボーナス・トラックが追加され、曲順も変更されました。これにより、アルバムはより魅力的なものとなりました。

アルバムには、エルヴィス・プレスリーの他、スコティ・ムーア、ハンク・ガーランド、ティニー・ティンブレル、ハロルド・ブラッドリー、グレイディー・マーティン、フロイド・クレイマー、ダドレイ・ブルックス、ゴードン・ストーカー、ボブ・ムーア、D.J.フォンタナ、バディ・ハーマン、ミリー・カーカム、ザ・ジョーダネアーズ、ブーツ・ランドルフなど、多くのミュージシャンが参加しています。

このアルバムはエルヴィス・プレスリーの音楽キャリアにおいて、重要な転換点となった作品の一つと言えるでしょう。彼の音楽的才能と新しい試みが詰まった、聴きごたえのある一枚です。

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