ポリ臭化ビフェニル

ポリ臭化ビフェニル（PBB）の解説

ポリ臭化ビフェニル（PBB）は、ビフェニル分子に複数の臭素原子が結合した化合物の総称です。化学式はC₁₂H(₁₀−n)Brn (1≦n≦10)で表され、臭素原子の数や位置によって209種類もの異性体が存在するとされています。

PBBは、その難燃性から、過去には自動車塗料やポリウレタンフォームなどに添加されてきました。特にアメリカでは、ABS樹脂にPBB製剤が添加された事例があり、その中には6臭素化PBBを主体とする「ファイアーマスター」と呼ばれる製品も含まれていました。このファイアーマスターは、ミシガン州で動物飼料に誤って混入されたことで、数百万羽の鶏が死亡する大惨事を引き起こしたことで知られています。

PBBの性質と毒性

PBBは、PCB（ポリ塩化ビフェニル）と類似の構造を持つため、脂溶性が高く、生物濃縮されやすいという性質を持っています。そのため、環境中や生物体内に蓄積しやすく、野生生物やヒトへの影響が懸念されています。

PBBの毒性については、PCBと比較してより強い毒性を示すとの報告があります。ミシガン州での事故がその端的な例です。急性毒性は比較的低いとされていますが、慢性的な曝露による影響は深刻であり、甲状腺機能の低下などが報告されています。また、熱分解によってダイオキシン類と同様の毒性を有する臭化フランが生成されることも確認されています。

PBBの代謝経路はPCBと類似すると推測されており、ヒトにおける6臭素化体の半減期は8～12年と比較的長くなっています。これは、体内に長期間蓄積される可能性を示唆しており、健康への長期的な影響が懸念されます。

PBBの環境への影響と分解性

PBBの高い脂溶性と生物蓄積性から、環境への影響は深刻です。水生生物や陸上生物への蓄積が確認されており、食物連鎖を通してヒトにも影響が及ぶ可能性があります。

一方、PBBは微生物による分解には抵抗性が高いと考えられています。しかし、光には比較的敏感であり、光分解によって分解される可能性も示唆されています。

PBBの規制

PBBは、その毒性と環境への影響から、多くの国で規制の対象となっています。RoHS指令（特定有害物質使用制限指令）でも規制対象となっており、中国でも中国版RoHSの規制対象となる見込みです。ミシガン州での事故以降、PBBの生産は段階的に中止されていますが、過去の使用による環境汚染は依然として大きな課題となっています。

まとめ

PBBは、高い難燃性を持つ一方で、高い毒性と生物蓄積性を有する有害物質です。過去の事故や研究結果から、環境への影響や人体への健康リスクは無視できないレベルにあると認識されています。PBBの規制強化と、既存の汚染の対策が急務です。今後、PBBの代替物質の開発や、環境浄化技術の進歩が求められます。

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