ポルシェ・カレラGT

ポルシェ・カレラGT

ポルシェ・カレラGTは、21世紀初頭のスーパーカーを代表するモデルとして、2003年に登場しました。製品コード980を持つこの車は、大排気量で高出力の多気筒エンジンを搭載し、カーボンファイバー製の軽量ボディを持つことが特徴です。特に、レーシングカーのようなエンジニアリングと、相反するラグジュアリーな快適性が融合した設計は、多くの自動車愛好家を魅了しています。

カレラGTの開発背景には、耐久レースの変遷が大きな影響を及ぼしています。ル・マン24時間レースなどでの競技の主役が、GTクラスからプロトタイプカーへと移行したことが、このモデルの生産に繋がりました。ポルシェは次期GTクラスのレーシングカーとして開発を進めていましたが、その技術をカレラGTに生かすことができました。

この車は、俳優ポール・ウォーカーが事故死した際に運転していたことでも知られており、その事故に関しては家族がポルシェを訴える事態となりました。ポルシェ側は、事故当時の速度が制限速度の倍以上であったことを理由に、運転者側の責任を強調しました。一方、カレラGTは運転が難しく、コントロールの自由度が低いとの評価もあり、特に技量のあるドライバーにとっても取り扱いが挑戦的なモデルとされています。

2019年には、米国のコレクターからの依頼でポルシェ・クラシックがフルレストアを行い、特別な仕様変更も実施されました。その結果、オークグリーンメタリックの新しいボディカラーが追加されるなど、単なる復元に留まらずカスタマイズも行われています。

機構・スタイル

カレラGTのボディはモノコック構造ではなく、カーボンファイバー製のキャビンと、エンジンやサスペンションを支持する籠状のサブフレームが組み合わさっているのが特徴です。このサブフレームは、エンジンを包み込むように設計されており、必要な場合には簡単に取り外すことができるため、整備性にも優れています。

ボディパネル全てがカーボンファイバーで作られていることにより、外部からの応力はシャシーに伝えられ、ボディにかかる負担が最小限に抑えられています。それによってタルガトップスタイルを採用しつつ、全体の軽量化が実現されています。このような工夫により、カレラGTの車両重量は僅か1,380kgです。

サスペンションにはダブルウィッシュボーン式が採用されており、ショックアブソーバーがインボードにマウントされています。さらに、ブレーキはポルシェ最先端の技術を駆使したPCCB（ポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ）が装備され、競技用車両で使用されるカーボンセラミックディスクを特徴としています。

パワーユニットはV型10気筒エンジンで、ドライサンプ方式の潤滑を採用しています。その排気量は5,733ccで、612PSを発生し、国家の規制に適合させながらも高出力を誇ります。このエンジンは軽量化にも成功しており、全体のパフォーマンス向上に貢献しています。

トランスミッションは6速MTで、特に小径のクラッチを使用していますが、これにより非常に扱いにくいとされることもあります。この点で、競合他社のモデルとは異なるアプローチを取っています。

カレラGTは最終的に1,500台の生産予定のところ、実際には1,270台のみが完成しました。それでも、この車両はポルシェの名を冠したスーパーカーのひとつとして今日でも高く評価されています。

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