ポロ作戦

ポロ作戦：インドによるニザーム藩王国の併合

1948年9月13日から18日にかけて、インド政府はニザーム藩王国（ハイダラーバード藩王国）に対する軍事作戦「ポロ作戦」を実行し、併合しました。この作戦は、インドとパキスタンの独立後、多くの藩王国の帰属問題が未解決の状況下で発生した出来事です。本稿では、ポロ作戦の背景、経緯、結果、そしてその後の影響について詳述します。

背景：インド・パキスタンの分離独立と藩王国問題

1947年8月15日、イギリス領インドは独立し、インドとパキスタンが誕生しました。多数の藩王国は、インドかパキスタンへの帰属を迫られましたが、ニザーム藩王国、ジャンムー・カシュミール藩王国、ジュナーガド藩王国は、帰属を決めかねていました。

ニザーム藩王国は、ムスリム支配者層とヒンドゥー教徒住民の多数派という複雑な宗教構成を有していました。藩王ウスマーン・アリー・ハーンは当初パキスタンへの帰属を希望しましたが、領内のヒンドゥー教徒の反発や地理的な制約から独立を宣言。しかし、イギリスが藩王国との軍事保護条約を放棄した結果、独立後のインドは藩王国の帰属問題を継承することとなりました。

ニザーム藩王国は、1724年の建国以来、長きにわたり独自の統治を維持し、豊かな鉱物資源を有する富裕な国でした。しかし、ムスリム支配者層によるヒンドゥー教徒住民への支配、ムスリム統一協会やラザーカール（イスラーム義勇軍）によるヒンドゥー教徒や共産主義者への弾圧など、深刻な宗教対立と社会問題を抱えていました。1946年には、テランガーナ地方で農民蜂起（テランガーナ闘争）が発生し、ニザーム政権に対する反乱が拡大していました。

インド政府の対応と作戦発動

インド政府は、パキスタンとの国境を接するジャンムー・カシュミール藩王国の確保を優先し、ニザーム藩王国とは暫定協定を結びました。しかし、ニザーム藩王国のパキスタンへの接近、経済封鎖への反発、国連への提訴など、対立は深まりました。

1948年9月、インド政府はラザーカールの解散とインド軍の進駐を要求。ニザーム藩王国が拒否すると、インドはポロ作戦を開始しました。作戦は警察行動として扱われましたが、実際には大規模な軍事侵攻でした。

ポロ作戦の経緯

インド軍は、複数の方面からニザーム藩王国領に侵攻しました。ハイダラーバード軍とラザーカールは抵抗しましたが、インド軍の圧倒的な軍事力により、作戦開始から数日で主要都市が陥落しました。

戦闘は激しく、多くの死傷者が出ました。ハイダラーバード軍とラザーカールは近代的な兵器を十分に保有しておらず、インド軍の空爆や装甲部隊の前に敗北していきました。

停戦と併合

9月17日、ニザームは停戦を発表し、事実上降伏しました。9月18日、ハイダラーバードの近郊でインド軍への降伏が正式に成立。ニザーム藩王国はインドに併合されました。

ポロ作戦後の影響

ポロ作戦後、インド政府は臨時政府を樹立し、ハイダラーバードの統治を開始しました。ムスリム官僚の解雇やヒンドゥー官僚の配置、共産主義者やラザーカールの弾圧など、社会不安の解消と統治の確立を目指しましたが、人権侵害や宗教的対立が深刻化する側面も見られました。テランガーナ闘争も1951年まで続きました。

ポロ作戦は、インドの統一と安定に貢献した一方、多くの犠牲者と社会問題を引き起こした複雑な出来事でした。 インド独立後の藩王国併合問題における象徴的な出来事であり、現在でも様々な解釈がなされています。

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