ポーリーヌ・フェリシテ・ド・マイイ＝ネール

ポーリーヌ・フェリシテ・ド・マイイ＝ネール

ポーリーヌ・フェリシテ・ド・マイイ＝ネール（Pauline Félicité de Mailly-Nesle, 1712年 - 1741年9月9日）は、18世紀フランスの王、ルイ15世の公妾の一人です。ネール姉妹の次女にあたり、一般にはヴァンティミール侯爵夫人の称号で呼ばれることが多かった人物です。

彼女の人生は、貴族の娘としてはやや異例な始まりでした。同世代の姉妹たちが10代で次々と結婚していく中、ポーリーヌ・フェリシテはなぜか縁談に恵まれず、20代の半ばを過ぎても独身でした。当時の貴族社会においては、これは非常に遅い結婚年齢と見なされていました。

しかし、1738年、彼女の運命は大きく変わります。すでに宮廷に上がり、王の公妾となっていた姉のルイズ・ジュリーに呼ばれ、ヴェルサイユ宮殿を訪れたことがきっかけでした。宮廷での生活は、それまでの静かなものとは全く異なるものでした。

ポーリーヌ・フェリシテは、姉と同様に、同時代の人々からその容姿の美しさを特別に評価されていたわけではありませんでした。彼女は背が高く、目つきにはやや不遜な印象があり、王から首の長さについてからかわれたこともあったと言われています。妹からは「擲弾兵のようだ」と評されるなど、典型的な美人とは異なるタイプの女性でした。

それでも、彼女には王を楽しませ、その心を掴む才能がありました。姉のルイズ・ジュリーに対する王の寵愛が薄れ始めていた時期でもあり、王は次第に妹であるポーリーヌ・フェリシテを新たな愛妾に迎えたいと考えるようになります。王は彼女にふさわしい身分と地位を与えるため、ヴァンティミール侯爵と結婚させました。そして、この結婚の後、正式に自身の公妾として迎え入れたのです。

突然現れた妹がライバルとなったルイズ・ジュリーは、後に完全に立場を失うようなことにはならなかったものの、実質的に非常に微妙で身動きの取れない状況に置かれることになりました。

新しい愛妾となったポーリーヌ・フェリシテに、王はショアジーの城館を与え、二人はそこで多くの時間を過ごしました。彼女は王の子を妊娠し、ドミ＝ルイという名のリュク侯を出産しました。しかし、出産から間もなく、彼女の容態は急変し、若くしてこの世を去ってしまいます。

王は、愛妾の突然の死に大きな衝撃を受けました。繊細な一面も持っていた王は、しばらくの間、自らの寵愛のあり方について深く考え込み、反省する様子を見せたとも伝えられています。しかし、王の意志は長く続かず、一時的に関係が回復しつつあった姉のルイズ・ジュリーをも見捨て、再び新しい愛妾を探し始めることとなりました。

ポーリーヌ・フェリシテは、姉のルイズ・ジュリーとは異なり、非常に強い権力志向を持っていました。彼女は積極的に人事に関与し、当時の重臣であったフルーリー枢機卿やモールパ伯爵をその地位から退けるよう、王に進言を繰り返しました。この権力への野心と政治への介入という彼女の路線は、後に続く妹のマリー・アンヌにも受け継がれていくことになります。

わずか29歳で波乱の生涯を終えたポーリーヌ・フェリシテは、ルイ15世の寵愛を巡るネール姉妹間の複雑な関係と、短期間ながら王に影響力を行使した人物として、その名を歴史に残しています。

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