ポール・アードマン

ポール・エミール・アードマン

ポール・エミール・アードマン（1932年5月19日 - 2007年4月23日）は、カナダ出身のアメリカの作家であり経済評論家として広く知られています。彼は金融分野での豊富な経験を活かし、金融業界の内幕や投資の実態をリアルに描いた作品を数多く発表しました。

略歴

アードマンはカナダのオンタリオ州ストラトフォードで、アメリカ人の両親のもとに生まれました。彼はジョージタウン大学の外交政策・国際関係大学院を卒業し、1958年にはスイスのバーゼル大学で博士号を取得しました。1965年、アードマンはカリフォルニアの投資家チャールズ・サリクの支援を受けて、スイスでプライベートバンクのサリク銀行を設立しました。この銀行は成功を収め、1969年にはユナイテッド・カリフォルニア銀行に買収され、彼はこの新しい銀行の責任者となります。

しかし、翌年、銀行はココアの投機に失敗し、5000万ドル以上の損失を被った結果破産しました。アードマンは役員の一人として詐欺容疑で逮捕されましたが、保釈後に書き上げた小説『十億ドルの賭け』がエドガー賞の処女長編賞を受賞します。これを機に彼は、国際金融をテーマにした作品を発表し、同時にウォールストリート・ジャーナルのマーケットウォッチ誌でコラムを執筆する経済評論家として活動するようになります。

作家業を開始した後は、カリフォルニア州ヒールズバーグに住み、晩年まで精力的に執筆を続けました。2007年4月23日、彼はがんのために亡くなりました。

作風

アードマンの作品は、彼の金融実務家としての経験を元にしており、マネーゲームのダイナミクスをリアルに描写しています。彼の小説には、実在の投資家や事件、金融機関が登場し、投資手法や金融商品も当時の最新情報に基づいています。その結果、業界の裏話や制度の欠陥、商品の設計ミスをついた手法が多く描かれており、そのリアリティから金融専門誌で高く評価されました。特に日本の金融機関では、彼の作品が新人研修の教材として用いられることもあります。

主要作品

アードマンの作品には、フィクションとノンフィクションがあります。フィクションの代表作には、エドガー賞を受賞した『十億ドルの賭け』や、『シルバー・ショック』、『1979年の大破局』、改訂版の『オイル・クラッシュ』、さらには『1985年の大逆転』、『マネー・パニック'89』などがあります。これらの作品では、金融危機や経済的な混乱をテーマに、実際の金融の動きを反映したストーリーが展開されます。

ノンフィクションでは、アードマンによる経済予測や市場分析が紹介されています。彼の著書『ポール・アードマンのマネー大予言』や『次に何が起こる？ - アードマン博士の大予測』などは、経済の変動やリスクについての洞察を提供し、多くの読者に影響を与えました。

アードマンは、その鋭い洞察と独自のスタイルで、金融文学の分野において確固たる地位を築いた作家であり、彼の作品は今でも多くの人々に読み継がれています。

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